30年の長寿ブランド「サクセス」がフルモデルチェンジ

男性用シャンプーといえば、花王の男性向け薬用シャンプー「サクセス」を思い浮かべる人は多いだろう。爽快さを強調したテレビCMや青を基調としたボトルの並ぶ店頭の展示を思い出す人も少なくないはずだ。そんなサクセスシリーズは、30年以上ブランドの続く花王の製品だ。

このサクセスが2020年春、フルモデルチェンジした。右肩上がりで成長してきた男性向け化粧品市場全体が、2017年以降は横ばい傾向にあった中、サクセスはフルモデルチェンジ直後の2週間で7製品累計160万本を突破しブランド市場最高記録を叩き出している。

「すでに今年度合計で500万本を突破しています。これは前年比で114%、本数で60万本プラスの快挙です。2月のフルモデルチェンジ直後に新型コロナウィルスが猛威を振るい、外出自粛が開始されましたが、その逆境の中でも勢いが落ちることなく好調を維持しています」と語るのは、花王のブランドマネジャーの水町直樹氏だ。

明日の清潔感キープに備える「男のスタンバイ」

長く続いてきたブランドだけに、これまでのユーザーは40代から50代と年齢層が高くなってきていた。しかし、フルモデルチェンジでは、20代から30代といった若い層にもアピールすることで、ユーザー層の拡大とブランド若返りが狙われた。新しいサクセスにつけられたスローガンは「男のスタンバイを科学する」。1日働いた今日の終わりに使うというよりは、明日へ向けた準備というイメージで使うイメージだ。

  • 「サクセス」の新しいスローガン「男のスタンバイを科学する」

「事前調査において、若い年代は、人と会う前にはきっちりしていたい、という身だしなみへの意識が高まっていることが見えていました。20代、30代の男性は入浴後に化粧水をつけることへの抵抗も少なく、清潔感を重視していますし、ビジネスにおいても外見や清潔感の大事さを感じています。そんな、明日に向けて清潔な状態にスタンバイしたい男性を応援するブランドでありたいという考えから新スローガンを作りました」と、水町氏は語る。

男性でも身だしなみに気をつかうことは、既に当たり前になっている。男性用化粧品のラインアップは年々充実しているし、コンビニエンスストアにも気軽に購入できるデオドラントケア製品が並んでいる状態だ。しかし、頭皮の日中ケアにまで着目した製品はあまりない。そこでサクセスは翌日の日中までしっかり清潔感を保つという「明日への備え」にフォーカスしたわけだ。

「頭トントン」チェックでも安心な洗い上がりを1度で実現

実のところ、花王は女性向けシャンプーと男性向けシャンプーにおいて、狙いが違っているという。女性向け製品は「髪を美しく」することを中心に作られているが、男性向けはより洗浄力に注目しているのだ。そのため、女性向け製品を男性が使った場合、多く出る皮脂や、しっかりとヘアスタイルを決めるために使われたハードなスタイリング剤の洗浄具合に不足が出がちだという。

「男性はシャンプーの2度洗いが日常化している人もいます。それは、1度洗いではスタイリング剤が落としきれずにべたつきが残ってしまうからです。けれど、洗いすぎは髪の負担になります。『しっかり洗いたいけれど、洗いすぎも不安』という魔の洗髪サイクルに悩まされている男性も多いので、1回のシャンプーですっきり洗浄できることをアピールしています」と水町氏。

洗い残しが皮脂は、頭皮のニオイの原因になる。洗いすぎはイヤだけれど、きちんと洗えているのか不安という場合、真に不安なのはニオイやべたつきが出てきていないかということだ。特に洗髪直後ではなく、翌日の日中にもなれば気になってくる人は少なくないだろう。

サクセスは、本当に髪や頭皮を洗えているかどうか、ケアが十分かどうかをセルフチェックする方法として、頭皮に軽く指先で触れる方法をコミカルに表現した「頭皮トントン」キャンペーンをインターネット上で展開。これにより、今までは自分のニオイを気にしていなかった男性の間でも意識が高まったという。

「発売後の第1弾キャンペーンで、『面白い』『人に教えてあげたい』などの反響がありました。この夏は第2弾を実施します。夏はベタつきやニオイをより感じるなど頭髪の不快感が強くなる季節なので、さらに多くの反響が寄せられています」と、水町氏は語る。

  • 「頭皮トントン」キャンペーンの特設サイトで紹介されている「頭皮トントン絶技」

人と会えないコロナ禍の中で躍進できた理由は?

フルモデルチェンジ後のアンケートでは9割が「リピートしたい」と答えるなど、大好評のサクセス。現在はコロナ禍の中でテレワークが続いている企業も多く、普段よりもみだしなみに関する意識が低下していそうな状況なのに、好調なのはなぜだろうか。

その理由の1つが、新たなテレビCMキャラクターとして起用されたKAT-TUNの亀梨和也氏の存在だ。

「男性向けシャンプーは、元々女性の代理購入が多い商品です。夫婦で別々のシャンプーを使うけれど、買うのは主婦という状態。そこにコロナ禍の外出自粛で、より代理購入の割合が増えました」と水町氏。

亀梨氏は新ターゲットである20代、30代男性にとって共感しやすい同世代キャラクターでありつつ、実購入層である女性にとっても魅力ある存在だ。外出は最低限に控え、買い物は夫婦や家族でそろって行くのではなく代表者1人で、という世情が女性による代理購入の比率を押し上げ、そこにアピールできていたサクセスの購買につながったのだろう。

また、20代をターゲットにしたサブライン製品「サクセス24」では、昨年にひきつづき西野七瀬氏を起用。インスタグラムで実施された投票で展開が変わるストーリー動画広告は人気を呼び、日々約7万人が投票に参加した。先に紹介した「頭トントン」キャンペーンなども合わせ、ターゲット本人となる男性に向けた広告と、購買を担う女性に向けた広告がうまく組み合わさったからこそのフルモデルチェンジ成功といえそうだ。

新しいサクセスでは、シトラス系の香りを従来通り採用しながらも、よりさわやかな香りに改良。メントール感と合せて、すっきりした洗い上がりと爽快感が強調されている。ビジネスやプライベートで誰かに会う前の身だしなみとしての利用はもちろん、なかなか外出できない状況でのリフレッシュにもぴったりな利用感は、今の状況でも活躍してくれそうだ。