富士経済は、2017年に入り中国をはじめとした設備投資の拡大、円安、補助金継続などを背景に需要が急増している工作機械とその周辺ツールの世界市場を調査し、その結果を「メタルプロセッシング・インダストリー関連市場の全貌 2018」にまとめた。

同調査は、工作機械として切削・特殊加工機8品目、成形機7品目、接合装置4品目、工作機械の周辺ツールとして自動化・デジタル化ツール5品目、保全系ツール3品目を取り上げ、地域別の販売動向や技術動向、ソリューション展開状況などを分析し、世界市場の動向と将来を予想したもの。調査期間は2017年10月~12月。調査方法は、富士経済専門調査員による参入企業および関連企業・団体などへのヒアリングおよび関連文献調査、社内データベースを併用して行われた。

注目市場

  • 金属3Dプリンタの世界市場推移予想

    金属3Dプリンタの世界市場推移予想

金属3Dプリンタ

金属3Dプリンタは複雑な形状の構造物や一体形の造形物を成形することができるなどのメリットから注目されている。需要は自動車や航空機、医療機器などの特殊仕様部品の製造、コンフォーマルクーリング構造金型用途などで多く、粉末金属材料の多様化も進んでいる。市場は海外を中心に拡大し、欧州や米国を中心に、研究開発用途から自動車関連や航空・宇宙関連分野などでの部品製造用途まで採用が進みつつあり、国からの補助金で製品普及を促す政策もみられるなど、海外市場は引き続き拡大が期待される。一方、国内市場はまだ小規模で、今後は企業内の研究開発用途にとどまらず、アカデミック利用や防衛関連など、産学官連携による幅広い分野間での研究開発を促すことが日本市場拡大には必要となってくる。

マシニングセンタ

マシニングセンタはATC(オートツールチェンジャー)機能を標準で備え、フライス加工、穴あけ、中ぐり、研削などを、工作物の移し換え無しで加工出来る装置。特に最近のアプリケーションは多品種中小量生産への流れが強まっていることから、需要が急速に高まっている。特に2017年はスマートフォン部品関連を中心とした電子デバイス・半導体分野で需要が伸び、自動車関連分野なども順調で、市場は拡大している。地域別にみると中国をはじめ、東南アジアなどで需要が伸びており、今後も需要が期待される。ハイエンドユーザー向けでは日本や欧米メーカー、ミドルレンジ以下のユーザー向けでは中国や韓国、台湾のメーカーが徐々に実績を伸ばしている。特に中国メーカーは豊富な資金力で欧州メーカーを買収し、急速に事業体制を強化しているなど、今後展開が活発化していくとみられる。

射出成形機

射出成形機はプラスチックなどの加工機であり、加熱したプラスチックを金型に押し込み、型に充填して成形する装置。世界市場は海外市場が主体で、自動車部品の成形品や電気・電子部品向けが大きな割合を占めている。2017年は中国や北米を中心に需要が増え、特に中国ではスマートフォン部品関連向けが好調である。さらに、中国では環境規制が強化され旧式設備の入れ替え需要が発生しており、5年程度はその需要が中国市場をけん引するとみられる。中期的には、世界市場は中国や北米を中心に大きく拡大すると予想される。また、欧州では現地メーカーが強く、プラスチック機械の統括団体であるユーロマップによる標準規格も海外メーカーの参入障壁となっているため、日本メーカーはユーロマップ対応を進めていく方針である。

次世代NC

次世代NCはNC(Numerical Control:サーボ機構と連動した軸制御による加工を事前にパラメータ処理することで自動化する)装置にIoT対応など付加価値機能をサポートできる情報系OSや機能を付加した装置。次世代NCは新品販売時に工作機械とセットで販売されるケースが大半で、IoT利用によるスマートファクトリービジネスを推進する大手メーカーが特に開発に注力している。次世代NCは日本や欧米で多いハイエンドユーザーでは受け入れられ易いが、ボリュームゾーンであるミドルレンジユーザー以下を開拓するには、今後次世代NCの必要性を啓発していくことが重要である。

調査結果の概要

  • 工作機械・周辺ツールの世界市場推移予想

    工作機械・周辺ツールの世界市場推移予想

工作機械・周辺ツールの世界市場は、2016年に設備投資が一服しマイナス成長となったものの、2017年には中国の電子デバイス・半導体分野や、欧米や日本などの自動車関連分野を中心に設備投資が拡大しプラス成長が見込まれる。プラス成長は2018年以降も続き、特に海外市場を中心に拡大していくとみられる。日本メーカーの世界市場における存在感は強く、高精密加工や機能複合化、IoT対応といった製品差別化によるハイエンドユーザー向けのビジネス展開を継続することで、今後も存在感を高めていくとみられる。一方、中国や韓国、台湾など、アジアメーカーの台頭も徐々に脅威となっているということだ。

なお、各工作機械・周辺ツールごとの詳細な市場の解説は、同社Webページに掲載されている。