東京大学(東大)は、物質中における電子とプロトン(水素イオン)の連動による新しい量子液体状態を発見したと発表した。

同成果は、東大物性研究所の下澤雅明 助教、上田顕 助教、森初果 教授、山下穣 准教授らの研究グループ、東北大学金属材料研究所の橋本顕一郎 助教、佐々木孝彦 教授らの研究グループ、および東北大学大学院理学研究科物理学専攻の中惇 助教(現:早稲田大学高等研究所 助教)と石原純夫 教授の研究グループによるもの。詳細は、英国の科学雑誌「Nature Communications」(オンライン版)に掲載された。

電子は、電荷とスピンを持っており、これらが物質の伝導性や磁性などを決めている。水素も、物質の性質や機能と関連しており、例えば、分子やイオンを水素結合させることで、誘電性を制御することができる。この両者に対する研究は80年以上前から行われてきたが、水素結合が電子と連動した際に、どのような物理状態が現れるかは分かっていなかった。

研究グループは今回、磁性を担う電子のスピンと誘電性を担う水素結合中のプロトンを上手くつなぎ合わせることで、電子スピンとプロトンの振動が両方とも絶対零度においても凍結することなく揺らぎ続ける、量子力学的な液体状態(量子常磁性・量子常誘電状態)を発見することに成功した。

  • 研究の概念図。水素結合上のプロトンが動くことで、電荷の偏りが現れて誘電性が生じる。質量の軽いプロトンは、低温でも量子揺らぎによって動きやすい特徴を持つ。一方、電子のスピンは物質の磁性を担う (出所:東京大学Webサイト)

研究グループは同成果に関して、電子とプロトンの連動性を利用して磁性・誘電性を同時に制御できる可能性を示すものであると説明しており、今後は新規デバイスなどへの展開が期待されるという。