平谷氏は、今後のCDPの活用で注目している点として、TREASURE CDPで提供されるサードパーティデータを挙げた。つまり、自社が保有するたばこ消費をめぐるデータに第3者が保有する様々なライフスタイルのデータを掛け合わせることで、顧客の行動傾向をより深く理解したいというものだ。

中でも平谷氏は世帯データに関心があるとして次のように説明する。

「以前から、たばこをやめるタイミング、ほかの銘柄に変えるタイミングは人生のライフイベントが大きく関係しているのではないかという仮説がありました。例えば、例えば独身の方は吸う銘柄に制約はないが、結婚すると“においの強いたばこや煙の多いたばこは吸いたくない”と嗜好性が変化するのではないか。ともすれば、子どもができると軽いたばこや加熱式たばこに変えるようになるのではという具合です」

ただ一方で、田中氏はJTスモーカーズIDが持つ特性故のジレンマも感じているのだという。JTスモーカーズIDは個人情報や属性情報を細かく入力させ、成人喫煙者であることを証明するために身分証明書の提示まで求めている。非常に高精度のデータだと言えるだろう。しかし一方で、これはサードパーティデータのデータ精度と比較した際に大きな差異が生まれてしまうことを意味している。

「サードパーティデータよりも自分たちの保有する情報の正確性に絶対の自信があります。だからこそ、正確な会員情報にサードパーティデータを当てて、例えば性別や喫煙者/非喫煙者などといった内容の不一致性が認められるとデータ利用を見合わせる場合もあります」(田中氏)

とはいえ、一元管理された自社データと外部のサードパーティデータの統合分析を通じて様々な発見を生み出し、マーケティングに活かしていくというプロセスに同社は大きな可能性を見出している。

「JTスモーカーズIDで顧客がいつもどのような銘柄を吸っているのかは大まかな把握ができますが、今後は“試し買い”“浮気買い”のデータが取れると面白いのではないかと思っています。データ分析から自社製品から離脱する可能性やどの銘柄に関心があるのかを把握できれば、より効果的なマーケティングができるはずです」(平谷氏)

そして、JTが現在力を入れている加熱式たばこ「Ploom TECH」の普及拡大も、大きなマーケティングテーマとなるという。

「加熱式たばこに関心のあるユーザーにはどういう傾向があるのかをデータ分析から明らかにしていきたいと思っています。その上でPloom TECHを訴求できるユーザーのセグメントを明確にしてアプローチしていくことが重要です。加熱式たばこは、従来のたばこと違い、使い方や他社製品との違いなど顧客ごとに求められる情報が異なり、 伝えるべき内容も異なります。コミュニケーションの優先順位や誰に何を伝えるかというシナリオ設計が重要になってくるはずです」(平谷氏)