今回のIBM World of Watson 2016では、IBM Watson Data Platformの発表が目玉となった。

IBM Watson Data Platformは、データ専門家向けに提供する世界最速のデータ処理エンジンにより、企業の意思決定を可能にするプラットフォーム。データセットを使った連携が可能で、好みの言語、サービス、ツールを適用できるため、データサイエンティストやデータエンジニア、ビジネスアナリスト、開発者などが高レベルで連携し、企業全体での洞察を簡単に視覚化および共有できるようになる。

IBM Watson Data Platform

具体的には、最速のデータ処理エンジンを活用し、様々なソースから提供される大量で、多様なデータを処理できるほか、データのクレンジング、編集、形成によって簡素化されたモデリングの提供、バージョン管理の保守時において、共同研究者の追加や削除の適宜実行、生産性と時間管理の向上を目的としたサービスの提供、アナリティックノートブックへのドラッグ&ドロップなどを提供する。

また、IBM Watson Machine Learning Serviceの提供により、機械学習を簡単に実行できる点も大きな特徴だ。Watson Machine Learningは、Apache Spark上に構築されており、データをもとに、モデルを自動構築。ニーズに合った提案が行われ、そのモデルをビジネス業務へと展開できる。

米IBMのPicciano シニアバイスプレジデントは、「IBM Watson Data Platformは、データアナリティクスの新たな力になるもので、AIによる意思決定をコグニティブサービスに内蔵して提供。今後、データとのかかわりあい方が変わり、情報を価値のあるものに変えることができる革命的なものになる。複数のプロフェッショナルがセルフサービスデータとアナリティクスプラットフォームの間でコラボレーションできる。また、オープンソースを活用しているため、幅広いパートナーと連携したソリューションを提供できる。新たなレベルで、インサイトエコノミーを提供できる。クラウドファーストのサービスであり、組織のサイロを崩すことができるものにもなる。データをアクションにつなげることができ、チーム全体が利用でき、より競争力を高めることができる。データに対して、シンプルにアクセスしやすくなる」としたほか、「データ専門家は、機械学習をビジネスに活用する技能と、データセット上で効率よく連携させる能力に欠けている。最大の課題は、データに対して機械学習を有効化できるかどうかという点。Watson Machine Learning Serviceは、機械学習の民主化が進むものであり、データをビジネスユーザーの手に届けることができ、様々な用途で利用できる」と述べた。

2017年には、欧州のGDPR(一般データ保護規制)にも対応することにも言及した。

さらに、米IBMでは、Watsonを活用する新しいコグニティブサービスとして、クラウドビデオテクノロジーを提供。人手による処理が一般化しているため、困難で時間がかかるビデオコンテンツの分析を自動化できるのが特徴。SNSへの投稿を分析して、ほぼリアルタイムで反応を追跡できる。

デジタルビデオでは、80%を超えるデータが構造化されていないため処理が難しく、洞察についてほとんど手つかずのまま。「IBMのコグニティブ機能とクラウド機能を使用して、企業が持つビデオデータから、個別の視聴者に対して意味のある情報を発掘し、特定の顧客向けにカスタマイズしたコンテンツを作成して届けることができるようになる大きな一歩」としている。

また、IBMは、視聴者の嗜好や感情に関するより深い洞察を提供できるように、IBMのコグニティブテクノロジーをIBM Cloud Videoプラットフォームと統合することも計画しているという。

さらに、Watson Virtual Agentも発表した。企業の顧客対応力向上という観点から開発されたもので、顧客の問い合わせに対する迅速な対応と、潜在的な問題を迅速に解決することが可能になるという。会話エージェントを簡単に作成して展開できることから、ユーザーは、事前に訓練した業界間共通のコンテンツを最小限の構成で実現。ボットをより迅速に展開できるようになる。

また、The Weather Channelが、IBM Watsonを活用した Facebookメッセンジャー向けボットサービスの提供を開始すると発表。Watsonの自然言語分類(Natural Language Classifier)やAlchemyLanguage APIなどの機能を活用し、ユーザーの好みを学習し、個人に合わせて気象に関するニュースや予報などを提供するという。ボットは39言語に対応しているという。さらに、The Weather ChannelではWatson Adsも提供。Watsonの機能を利用しながら、個人が企業と対話をしながら、最適な情報を得ることができるサービスとなる。たとえば、「大雪に備えるにはどんな準備が必要か」、「いま、どんなアレルゲンが浮遊しているのか」といったことを問いかければ、最適な回答を得られる。すでにトヨタ、ユニリーバ、キャンベルなどが採用しており、「次の大きなフロンティアになるものであり、1対1とのパーソナルな関係を提供するサービス」(ウェザーカンパニーのCameron Clayton CEO)とした。

ウェザーカンパニーのCameron Clayton CEO

そのほか、新たなIBM DB2において、Linux、UNIX、Windowsおよびz/OSで使用可能なハイブリッドトランザクション分析処理(HTAP)を組み込む予定であることも発表。「IBMは、顧客との対話の点でリアルタイムの洞察を提供することにより、それらのデータからより多くの価値を生み出すことができるようになる」(米IBMのPiccianoシニアバイスプレジデント)とした。