米Dellは、10月20日~22日(現地時間)、米テキサス州 オースティンで「Dell World 2015」を開催したが、期間中、Chief Commercial Cfficer and President, Enterprise SolutionsのMarius Haas氏に、EMC買収に関するより具体的な内容を聞ける機会を得たので、レポートする。

EMCの買収について

インタビューの冒頭、Marius Haas氏はEMCの買収について、「EMCの買収にはまだ時間がかかり、現在はまだ、どのように進めていくのかを検討してる最中だが、お客様からは前向きなフィードバックや期待の声をもらっている。EMCの買収によって加速して前に進んでいけることに対して非常にワクワクしている」とコメント。

日本法人については、「APJ(Asia Pacific and Japan)に関しては統合の一部分となると思っているが、その計画はまだ途中で、最終決定にはいたっていない」と回答した。

統合はどのように行うのか?

米Dell Chief Commercial Cfficer and President, Enterprise Solutions Marius Haas氏

Marius Haas氏:柔軟性を確保しながら、コアの部分に集中していく予定だ。VMwareは株式公開企業なので、このまま存続させる。EMCのほうは、コンピュータ、ネットワークやストレージ部門を1つの部門に統合し、ハイパーコンバージェンスを加速していこうと思っている。さらに、クラウド、セキュリティなど新しい分野が加わってくるので、さらに新しいことができる。(統合に関しては)、ある程度の独立性は確保していこうと思っている。シナジー効果も期待しているが、市場で高い伸びを示している分野については、迅速に行動する面を失いたくないと思っている。

VMwareの独立性については

Marius Haas氏:VMwareはそもそもヘテロな環境をサポートする会社なので、その環境は失いたくないと思っている。パートナーシップは強固にするが、独立した事業としてやってもらう。ビジネスは支えるつもりだが、そんなに口を挟むことは考えていない。非常に高い独立性を保ちたいと思っている。

ではVMwareについて、統合によるシナジー効果はどうやって出すのか?

Marius Haas氏:例えば、VMwareのソリューションをディストリビューションしやすくすることを、すべてのサーバに組み込むことで、普及しやすくするといったことが考えられる。また、今週マイクロソフトのクラウドソリューション(「Dell Hybrid Cloud System for Microsoft」:Azureとのハイブリッドクラウド構築するためのコンバージドシステム)を発表したが、VMwareとも同じことやっていくなど、いくつものプロジェクトが考えられる。これによって、VMwareがさらに市場に浸透していくお手伝いになる。

買収の懸念材料は?

Marius Haas氏:重要なことは、慎重にプランニングすることだ。まず、やるべきことは、双方のエクゼクティブが話し合って努力することだ。統合に向けた最初の話し合いはオースティンで今週にも行う予定だ。すでに、統合に向けた計画は立ち上がっている。EMCは大企業が強い、デルは中堅が強い。ストレージにおいてはオーバーラップがあるが、EMCは高価格帯が強いという特徴がある。

米HP EnterpriseのCEOのメグ・ホイットマン氏の、買収費用の利息がかさみ、デルは投資に回す費用がなくなるのではないかというコメントをどう思うか?

Marius Haas氏:EMCは、統合が発表される前からコストを8億5000万ドル削減するという計画を発表している。メグ・ホイットマン氏は、HPの財務状況を明らかにしていない。また、HPは46億ドルを払って株式の買戻しを行い、配当も払っている。これは、デルが払う利息よりも高い金額だ。財務的にはデルのほうが強い。マイケル・デルがちゃんと事実を見てほしいといっているはこの点だ。

企業文化の違いはどうか?

Marius Haas氏:EMCとは長年の間、一緒にビジネスをやっており、EMCのソリューションを一時は20億ドル以上売っていた。したがって。営業面ではうまくいっている。お客様への情熱と、お客様を勝ち取るという考えは両社に共通しているので大丈夫だ。

PCビジネスについて

PCビジネスを売却する可能性はあるのか?

Marius Haas氏:チップやHDD、メモリベンダーにとって、デルは一番の顧客だ。したがって、スケールメリットを発揮することができる。そして、その価値をお客様にもたらすことができる。コモディティ化が進んでいる分野だが、コスト競争力が強いので、それをエンタープライズ領域にも波及させることができる。過去の歴史を振り返っても、PC事業を売却して、サーバ部門のポートフォリオをちゃんと築くことができた企業はない。よくわからないが、HPの選択は誤りだと思う。我々は、PC事業はほかの事業にもメリットを提供してくれるコアのビジネスだと思っている。例えば、シンクライアントや仮想デスクトップなどは、その8割がエンタープライズ側だ。PC事業を売却する予定はまったくない。メディアの間ではそういう噂が流れているが、計画はまったくないし、これからも伸びていくと思う。市場自体は縮小しているので、HP、レノボ、デルの3社に集約されていくと思うが、パイを他社から奪うしかない市場なので、より攻撃的にやっていくつもりだ。

IoTについて

キーノートでマイケル・デル氏が IoTの新たな組織を作ったと言っていたが、どんな組織なのか?

Marius Haas氏:これは秘密にしていることだが(わざと秘密にしているわけではないが)OEMビジネスだ。デルのテクノロジーをどのようにソリューションとして組み込んでいくかを考えている。例えば、ヘルスケアにおけるMRIなどだ。この中にはたくさんの機能が盛り込まれている。この分野は一番高い成長を遂げているビジネスだ。IoTではどのようにセンサーやテクノロジーを組み込んでいくのか、また、そこから情報をどのように抽出するのかを考えている。我々にとっては、楽しいビジネスだ。

日本法人について

日本法人では8月に新たな社長、副社長を迎えたが、この点についてMarius Haas氏は、「平手社長、松本副社長という新しいリーダーが就任したが、現在、100日プランというアクションプランを作り、パートナーシップを加速するにはどうしたらいいのか、カバレージに対する投資も検討している。実は、2週間後に日本に行く予定で、そのとき幹部の人たちと会う予定だ」と説明した。

デル 代表取締役社長 平手智行氏

イベント会場では、新社長の平手智行氏に会うこともできたが、同氏は今回のDell Worldについて、「世界中から素晴らしいお客様がいらしており、我々は大変な意気込みでセッションを揃えている。今回のDell WorldではクライアントPCのDellではなく、サーバ/ソリューションのDellということがわかっていただけると思う。EMCの買収の件では、他社からの有利な提案を受け付ける60日間のgo-shop期間があり、正式な確定ではないが、我々のサーバ/ソフトウェアと、EMCのストレージ領域のコラボレーションによる相互補完ができるという観点でお客様から期待をいただいている」と語った。