英BBCは10月15日、新たに、日本語版ニュースサイト「BBC.jp」を公開した。今後、英BBC.comの中より選りすぐったニュースを日本語に翻訳し配信していく。

同日、ヒルトン東京にて記者会見が開催され、BBCグローバルニュースリミテッド CEOのジム・イーガン氏(以下、イーガン氏)と、BBCワールドジャパン 代表取締役マーケティング・ダイレクターの渡辺雄二氏が出席した。

日本語版ニュースサイト「BBC.jp」イメージ

BBCは、1922年にロンドンのラジオ局としてスタートし、世界初のテレビ放送やラジオ短波による世界放送など、メディアにおける技術革新と共に歴史を歩んできた。現在は、世界200以上の国や地域でテレビ・ラジオを配信するほか、WebサイトではPCやモバイル端末から月間5,800万UUにニュースを提供。動画配信やソーシャルメディアも積極的に活用している。

日本においては、1994年よりケーブルテレビやCS放送においてニュース・ドキュメンタリーを中心とした「BBC WORLD」の放送を開始。オンラインでは、2012年よりニコニコ動画に有料チャンネルを、今年(2015年)のはじめにはYouTubeに公式チャンネルを開設し「期待をはるかに超える数字を出している」(イーガン氏)という。日本語版ニュースサイトの開始は、まさに満を持してという形となる。

BBCグローバルニュースリミテッド CEOのジム・イーガン氏

視聴者の変化に対応し、革新し続けるメディア

記者会見の冒頭、あいさつに立った渡辺氏は、BBCのスピリットとなる「LIVE THE STORY」という言葉を挙げた。この言葉には「ニュースを生きる、生きたニュースを配信するという精神が込められている」という。

「BBCの最大の特徴は、世界最大規模の拠点とジャーナリストを持つこと。物事が起きてからレポーターを派遣するのではなく、その国で暮らし、歴史と背景を理解している記者が、生きたニュースを伝えています。それが『LIVE THE STORY』です」(渡辺氏)

BBCワールドジャパン 代表取締役マーケティング・ダイレクター 渡辺雄二氏

続いて登壇したイーガン氏は、昨年も、BBC WORLD日本版放送開始20周年記念式典のために来日したばかり。この20年といわず、この1年間でもニュースを取り巻く状況が大きく変わっていることを実感していると話す。

「ニュースは日々動き、報道機関は遅れをとらないように走り続けています。BBCのような伝統的な報道機関は、それにどのように対応していくかが大きな課題です。その答えは93年前から一貫して同じ"革新していくこと"です」(イーガン氏)

視聴者の変化に対応し、自分たちも革新しなくてはならないとジム氏は主張。そのための取り組みとしてBBCは、Twitterで最もシェアされるニュースブランドであり、Facebookの「Like!」は5000万回を超えると話した。また、番組をモバイル機器のみで制作する、番組内の議論をモバイルで続ける、視聴者からアイデアを募るなど、多面的な施策が行われていることを映像で紹介した。

BBCが考える「ニュース機関の存在意義」

目の前で起きたことを誰もがすぐに世界へ向けて発信することができる時代だ。では、ジャーナリストの存在にはどんな意味があるのか。イーガン氏は、誰もが発信できるからこそ、BBCのような機関がこれまで以上に重要になってくると説明する。

「誰でもいろいろな意見を表明できるようになり、プロパガンダと事実の間が曖昧になってしまう中で、中立公正なニュースを得る機会と、背景をきちんと説明し視聴者が判断するための手助けになる情報が必要です。私たちのような機関が、デジタルの世界ではこれまで以上に重要になってくるわけです」(イーガン氏)

ソーシャルメディアで知ったニュースも、BBCで見るまでは信じないというユーザーの声も多いという。イーガン氏は、最終的に事実を確認し背後の真相を伝える責任を担うことにプロのニュース機関としての存在意義があると主張し、BBCは、ニュース報道において世界から信頼されるリーダー的存在としての地位を維持できる立場にあるとの自負を示した。

また、日本における調査では、9割以上が国際ニュースに関心を持ち、4分の3が世界情勢に対する関心が増していると回答したという。同時に、3人に1人が主なニュースソースをオンラインサイトであると回答し、この数字は前年と比較して50%増加している。こうした背景から、「BBCのデジタルイノベーションの中で、日本におけるサービスを開始するのは当然の流れ」だったわけだ。

「BBC.jp」が提供するニュースは、国際問題やビジネス、エンタテイメント、テクノロジー、および世界の旬の話題といったカテゴリに沿ったもの。東京を拠点とするエディターが、日本のユーザーにとって有意義で興味を引く話題を英語サイトから選び、記事やビデオコンテンツを作成していく。

デジタルプラットフォームにおけるニュース消費が急拡大し、ソーシャルメディアが台頭する現在。イーガン氏は、「ヤフーやスマートニュースなどのユーザーにもBBCのニュースに触れていただくことが目標です。これは我々にとって非常に良いビジネスモデルとなるでしょう」と日本における活動の方向性を述べた。