ニュータニックスは9月9日、事業戦略に関する記者説明会を開催。米国で6月に開催したユーザーイベント「.NEXT Conference」で発表した次世代プラットフォーム「Nutanix Xtreme Computing Platform(XCP)」を解説した。

XCPは、同社が推進するハイパーコンバージドインフラストラクチャをさらに拡張し、次世代の「インビジブル・インフラストラクチャ」を実現するためのプラットフォーム。インフラの統合基盤となる製品「Nutanix Acropolis」と、それをコントロールするための管理製品「Nutanix Prism」という2つの製品群で構成される。

Nutanix エンジニアリング部門担当シニアバイスプレジデント Rajiv Mirani氏

来日した、Nutanixのエンジニアリング部門担当シニアバイスプレジデント Rajiv Mirani氏は、インビジブル・インフラストラクチャについて、「インフラのあるべき姿であり、ユーザーに意識されずに本来の機能を提供していくものだ」とし、次のように説明した。 「インビジブルなインフラストラクチャは、電力のように確実に動作(Just Work)すること、ハイパーバイザーなどの制約なく動作(Remove Constraints)すること、推定の作業などが必要ない(Eliminate Guesswork)ことがポイントだ。現在のインフラは、インビジブルにはなっていない。我々は6年前にストレージからこの取り組みを始め、今では仮想化分野に拡大させた。今後は、クラウド分野についてもインビジブルにしていく計画だ」(Mirani氏)

インビジブルインフラストラクチャのカバー範囲

たとえば、ストレージ分野では、HDDとフラッシュを使ったソフトウェアデファインドなアプライアンスを提供してきた。また、仮想化分野では、VMware vSphere(ESXi)やMicrosoft Hypre-Vなどのハイパーバイザーにかかわらず仮想マシン(VM)を稼働できる基盤を整備した。今後は、クラウドについても、たとえば、オンプレミスのESXiで稼働するVMをAWSのEC2に数クリックでマイグレーションする機能などを提供する予定になっている。

XCPの具体的な機能については、ソリューションマーケティング担当ディレクター Sachin Chheda氏がデモを交えながら紹介した。Chheda氏によると、XCPの構成はデータプレーンを担当するAcropolisと、マネジメントとコントロールを担当するPrismに分かれる。

Nutanix ソリューションマーケティング担当ディレクター Sachin Chheda氏

このうち、Acropolisは、分散ストレージファブリック(Distributed Storage Fabric)、アプリケーションモビリティファブリック(App Mobility Fabric)、Acropolisハイバーバイザー(Acropolis Hypervisor: AHV)の3つで構成される。

分散ストレージファブリックは、高度な分散ソフトウェアアーキテクチャを採用し、スナップショット、高可用性、ディザスタリカバリ、重複排除、イレージャーコーディングによる最適化などのストレージ機能を提供するもの。

従来から提供してきた機能に加え、Acropolisでは、ワークロードに最適化なサイズを構成できるツール「Nutanix Sizer」の提供、注文に応じて構成を変えるCTO型での提供、Microsoft Exchangeのような特定のプロトコルを要求するアプリケーション向けにiSCSIストレージのマウントへの対応、Oracle DatabaseやSQL Serverなど向けにVMをフラッシュに固定して利用する機能、独自アルゴリズムによるイレージャーコーディングによる最適化などに対応した。

XCPを構成する製品ファミリーの概念図

一方、Prisimは、ESXi、Hyper-V、AHVの仮想化環境に対応し、ワンクリックでインフラ全体の管理ができることが特徴となる。機能としては、大きく、インフラストラクチャ管理、トラブルシューティング、運用のための分析機能の3つを提供している。

Prismの概念図

インフラストラクチャ管理では、ESXiホストをAHVにマイグレーションしたり、仮想ネットワークの管理やストレージサービスの管理を1つの画面上から管理可能だ。デモでは、ESXiのVMをAHVにマイグレーションする際に、VMDKからVHDへの仮想ディスクの生成と切り替えまでを行うことができることを示した。

仮想マシンを異種ハイバーバイザーにマイグレーションする際の操作画面

また、トラブルシューティングでは、原因を自動的に特定する機能や、サービスの影響を特定する機能、システム設定の変更を自動的に検知する機能などを提供。さらに、運用のための分析機能として、機械学習によりインフラのワークロードの傾向を自動的に分析し、将来のキャパシティ不足やパフォーマンス不足をアラート表示する機能などを提供する。これにより、新規アプリケーションや日々の業務のサポートに必要な要件をプロアクティブに分析し、対応できるようになるという。

XCPの導入効果として、IDCと共同で実施した顧客13社に対する調査では、5年間のROIで510%、投資回収までの期間は7.5ヵ月、従来構成と比較して98%ダウンタイム削減、ストレージデプロイ時間の85%の削減といった効果があったことを紹介した。

IDCとの顧客調査で得られたXCPのベネフィット

「特筆すべきは、この調査では、環境全体を管理する時間を71%も削減できたこと。こうして削減した時間を使ってビジネスへの直接的な貢献も可能になる」(Chheda氏)

日本市場の展開については、ニュータニックス・ジャパンのマネージングディレクター安藤秀樹氏が解説した。安藤氏によると、Nutanixの米国市場における評価は、ハイバーコンバージドインフラストラクチャのリーダーであり、仮想化基盤に強いストレージ基盤としてだけでなく、インフラの統合基盤としての利用が広がっている。

ニュータニックス・ジャパン マネージングディレクター安藤秀樹氏

「VDIとしての利用シェアはかつての60%から30%にさがった。代わりに増えてきたのが、SAPの基盤や、Exchangeの基盤などプライマリーストレージの利用だ。新たな活用領域似対する問い合わせは増えている」(安藤氏)

国内においても、その傾向は見えはじめているが、まずは、レスポンス性能と拡張性が厳しく要求されるVDI向け基盤としての強みを訴えるという。さらに、スモールスタートできるブロモーション価格での提供などをすすめ、市場開拓を強化。そのうえで、SAP基盤、Oracle環境、ビッグデータ基盤、サーバ仮想化などへのニーズに対応していく。国内法人組織も現在の20名から来年には50名規模に拡大させ、サボート品質を強化していくとした。