「車両運行管理」を目指し、ドライブレコーダーを導入

システムキッチンやユニットバスなどの住宅設備をはじめ、配管部材、建材、電設資材など、住宅関連機器の総合商社として、東北から東海までの広大なサービスエリアで地域密着型のビジネスを展開する小泉。配送トラックと営業車、合わせて約1300台にも及ぶ車両を自社で管理運用する同社では、車両運行の効率化や交通事故の撲滅などを目指してテレマティクス型のドライブレコーダーを導入。わずか2カ月という短期間で全車両に設置・稼働し、点から面の営業への転換、事故防止、業務時間の効率化を実現している。

かねてより同社では、タイムリーかつ、きめ細かなサービスとサポートを提供していくため、車で30分、遅くとも1時間以内に顧客にアクセスできるように営業拠点を展開してきた。現在では、グループのブロック子会社9社が管轄する営業拠点は合計90カ所以上に達しており、各拠点には配送用トラックを配置しているほか、社員にも原則1人1台の営業車を用意し、機動的な営業活動ができる環境を整備している。

しかし一方で、首都圏などの営業所が近接している地域では、顧客の事業所や施工現場が営業所の担当エリア外に存在することも少なくない。すると、配送車や営業車がそれぞれのエリア内外をクモの巣のように入り乱れて運行することとなり、配送エリアや営業エリアの重複が発生してしまうという課題を抱えていた。

そうしたなか、長坂紘司社長から、燃料費など車両運用コストの面も含め、配送効率の向上と、密度が高く無駄のない営業方法を検討するように指示がなされた。

小泉 総務部 部長 福持博巳氏

同社経営管理本部総務部の部長、福持博巳氏はこう振り返る。「社長からの指示もあって、GPS運行管理機能を備えたドライブレコーダーによって各営業所の配送車、営業車の運行状況などを詳しく把握したいと考えました」

あわせて、交通事故の撲滅もドライブレコーダー導入の目的として掲げられた。日々1300台もの車両が走り回っていることから、軽微な物損事故も含めると毎月それなりの数の事故が発生してしまっていたのである。

「事故を起こしてしまうと、地域社会にご迷惑をおかけするだけでなく、商品の配送も遅れてしまいます。また、事故が増えれば、車両保険などの負担も膨らんでいきます。社用車による交通事故の撲滅は、企業の重要な社会的責任であるのはもとより、経営面でも見逃すことのできない重要課題なのです」(福持氏)

当然、同社はこれまでも講習などを通じて、営業担当者や配送ドライバーに対する安全運転の指導・教育に力を注いできたが、さらなる事故削減を実現すべく、ドライブレコーダーの導入を検討することとなったのである。

交通事故が激減、リアルタイムな運行状況把握も

こうしてドライブレコーダーの導入検討を進めてきた小泉が最終的に導入したのは、日本ユニシスのカメラ付き携帯通信型の運行管理支援サービス「無事故プログラムDR」だった。これは、カメラ・GPS・携帯通信モジュールを搭載したドライブレコーダーと、日本ユニシスのクラウドサービスとの連携による高機能テレマティクスサービスだ。

同サービスでは、ドライブレコーダーが記録した危険運転情報などがリアルタイムで日本ユニシスのデータセンターに集約され、重要な情報があると即時に利用者へとメール通知されるようになっている。また、車両の位置情報や運行情報なども一定のタイミングでデータセンターに送信されるため、利用者は管理用Webサイトから車両の運行状況管理や危険運転統計の集計・分析などを行うことができる。

「無事故プログラムDR」の選定理由について、福持氏はこう説明する。「複数のGPSドライブレコーダーを検討したのですが、業務が終了して営業所に戻ってこないと運行状況を確認できなかったり、各営業所に管理用のシステムを導入する必要があったりと、当社が求める利用形態には不十分なものばかりでした。そんななか、無事故プログラムDRは、危険運転情報や車両走行ルートなどの多彩な情報をリアルタイムに管理できる点や、1000台を超える車両情報をクラウド経由で効率的に管理できる点など、当社のニーズを満たしていると判断し、導入を決定したのです」

まず2014年5月に、都内の2つの営業所で運用する配送トラックと営業車、合計28台に無事故プログラムDRをテスト導入。その結果、この2営業所の事故件数が激減したため、安全運転を促す効果は絶大であることがわかった。

小泉 総務部 部長 弦間正徳氏

「交通事故の発生時だけでなく、急ブレーキや急ハンドル、急加速、速度超過といった危険運転の発生を、加速度センサーや車載機器との連動によって感知してビープ音でドライバーに注意を促すようにしているので、そうした効果が大きかったのでしょう」と話すのは、同じく総務部の部長を務める弦間正徳氏だ。

その後、小泉では約1カ月をかけてグループのブロック子会社9社を回り、ドライブレコーダー導入に関する説明会を開催。安全運転の重要性とドライブレコーダー導入のメリットを営業所の管理者や配送ドライバー、営業担当者に訴えた。

こうして2014年9月、残る全車両にドライブレコーダーを設置し、全社での運用がスタートする。

ドライブレコーダーの管理画面では、全車両のリアルタイムの運行状況が全国9ブロックごとに色分けして表示されており、その傘下にある営業所もまた色分けされている。このため、配送エリア・営業エリアの重複状況を簡単に把握できるようになっているのだ。この機能は、小泉が日本ユニシスに要望して開発されたものである。運行状況は毎日集計され、1週間、10日間、1カ月などの期間ごとに、各車両が効率的に運行できているかどうかを地図上で確認が可能。この結果をもとに、さらに無駄のない運行計画を立てることができるようになった。

また、危険運転は6つのランクに分類され、危険度の高いレベル1~2のイベントが発生した時は、前後の静止画像6枚を添えた事故情報・危険運転情報が、所轄の営業所と本社の車両管理者にメールで送信される。レベル1~2の動画およびそれ以下のレベルの静止画もドライブレコーダーに搭載されたSDカードに記録されるため、業務終了後に取り出して確認することが可能だ。

日本ユニシスの「無事故プログラムDR」の画面。ドライバーの所在地が一目でわかる

「導入した9月の時点で、事故の件数が前年比で大幅に減少しました。事故発生時、もしくは事故に直結しかねない危険な状況がリアルタイムに把握できるようになりましたので、ドライバー本人に直接連絡を取って確認・注意するなど、迅速な対応が可能になりました。また、危険運転情報は車両ごとに集計管理されるため、危険度の高い運転をしているドライバーに対し、具体的なデータに基づいて改善を指導できるのも大きなメリットです」と、福持氏はコメントする。

また同社では、ドライブレコーダーを労働時間を適正化するための勤怠管理にも活用している。ドライブレコーダーに走行日時やルートなどが記録されるため、例えば夜間の営業先訪問や頻繁な深夜帰宅も把握することが可能なのだ。

「そうした状況が判明した場合は、営業所の上司と相談して改善を指導するなど、労働時間の短縮を図るようにしています。営業効率化によって社員にも早く仕事を終えるようにし、仕事と生活のどちらも充実してもらいたいですから。具体的なデータがあるとより説得力が増すと実感しています」と、福持氏は語る。

ドライブレコーダーで蓄積されたデータは3年前までさかのぼることが可能だ。同社では今後、こうして蓄積されたデータを分析・活用することで、さらなる交通事故の撲滅や営業の効率化を目指している。