日本IBMは、今年9月16日に発表したクラウドアナリティクスサービス「IBM Watson Analytics」の正式版の提供を、12月18日から開始すると発表した。11月からは、ベータ版を提供してきたが、今回、正式版を無償で提供するとともに、月額4,158円(税別)のパーソナルエディションエディションを用意した。

IBM Watson Analyticsは、IBMが進めてきたコグニティブ・コンピューティング技術を実用化したもので、「自社の製品売上の主な促進要因はなんですか?」、「どの福利厚生が従業員の維持に最も効果的ですか?」といった質問形式の自然言語を使用し、予測分析を行いやすくする機能を提供。データの作成、予測分析、ビジネス向けの視覚的な説明などを自動化することができる。マーケティングや人事、営業担当者は、データを迅速に探し出し、余分な要素を取り除いて精製し、そこから洞察を得て、成果を予測。結果を可視化し、レポートとダッシュボードを作成できるようになるという。

日本IBM ソフトウェア事業本部長のヴィヴェック・マハジャン専務執行役員

日本IBM ソフトウェア事業本部長のヴィヴェック・マハジャン専務執行役員は、「システムズ・オブ・レコードおよびシステムズ・オブ・エンゲージメントを融合して、そこから知恵を出すことが求められている。これが、システムズ・オブ・インサイトとなる。IBMは、Watsonで研究してきた技術をベースに、クラウド上でアナリティクス機能を提供することができ、一般的な企業にも使ってもらう環境を提供できる。これができるのはIBMだけである」とした。

Watsonは、2006年に開発をスタートし、10億ドルを超える投資を行い、約2,000人のプロフェッショナルを活用するとともに、IBM Watsonグループを組織化。さらに、Powered by IBM Watsonエコシステムを立ち上げている。2011年には、米国のクイズ番組である「Jeopardy!」で、クイズ王を破るという実績を達成している。

「Googleの検索では様々な回答が出るが、Jeopardy!ではひとつの回答しか出ない。その正解率は約89%である。医療分野においては、医師の判断を支援するものとして利用されている」(マハジャン専務執行役員)とした。

日本IBM ソフトウェア事業本部ビジネス・アナリティクス事業部・西孝治事業部長

日本IBM ソフトウェア事業本部ビジネス・アナリティクス事業部・西孝治事業部長は、「Watson Analyticsは、Watsonの基本技術だけでなく、Cognosのビジュアライゼーション技術と、SPSSの予測機能を組み合わせて提供するものである。Watsonと対話をしながら、データ分析の知見に関係なく、誰もが高い水準の結果を導き出すことができる。マーケティング、営業、財務、IT、人事などあらゆる部門で利用できるもの」とした。

Watson Analyticsでは、自然言語と視覚化による分析と対話インタフェースを実現するとともに、自動実行される高度な予測分析を行い、クラウド環境により迅速な対応を可能にしているのが特徴だ。

Watson Analyticsは、クラウドを通じて、ビジュアライゼーションを提供する「Explore」、予測を行う「Predict」、ダッシュボードを生成する「Author」という3つの機能を提供。500MBのストレージスペース、50の変数、10万レコードまでを利用できる無償版に加えて、パーソナルエディションを用意。同エディションでは、2GBのストレージが利用できるほか、256の変数と、100万レコード、SPSSとの連携や他のクラウドサービスとの接続を提供する。現時点では英語のみをサポートしているが、今後、日本語版を提供する予定であり、それに向けて準備中であることを明らかにした。

Watson Analyticsの画面

「今後、いくつかのメニューが追加されることになるだろう。まずは、無償版あるいはパーソナルエディションを通じて利用してもらい、より高度な分析を行いたい場合には、パーソナルエディションを通じて、SPSSとの連携を行うことで実現できる」などと述べた。 同社によると、9月16日の発表後、2万2,000人以上がベータ版を利用するためにサイトに登録。Watson Analyticsコミュニティには、ニュースやベストプラクティス、テクニカルサポート、トレーニングを共有する機能を持っているという。

一方で、Watson Analyticsに関連するクラウドデータサービスの強化についても言及した。

日本IBM ソフトウェア事業本部インフォメーション・マネジメント事業部BigData&DM製品営業部・森英人統括部長

日本IBM ソフトウェア事業本部インフォメーション・マネジメント事業部BigData&DM製品営業部・森英人統括部長は、「これまでの非構造化データ知識ベースのWatsonに加えて、構造化データを活用したWatson Analyticsの登場に対応し、クラウドを前提とした次世代型データベースであるdashDBを発表するとともに、オンプレミスの技術をミラーリングする形で、同じテクノロジースタックをクラウド上に展開。実績のある技術をクラウド上でも活用でき、ユーザーに蓄積されたスキルの継承もできるようになる。これによって、IBMは、オンプレミスとクラウドを活用したハイブリッドクラウド環境でのアナリティクスを提案することができる」とした。

また、今回の発表は、Twitterとのグローバル提携に含まれるTwitterのデータをIBM Watson Analyticsの一部として提供する計画に則ったものと位置づけている。

「Twitterとの提携により、Twitterが提供するすべてのログを、IBMクラウドで利用が可能になる。また、Twitterのデータを利用して分析することができる10種類のアプリケーションを提供していく。今後は、ニュースサイトや各種データとの連携によって、IBMのクラウドに来れば、それらのデータを利用して、無償あるいは安価に利用できるデータマーケットプレイスの取り組みも行っていくことになる。これは、アップルの取り組みに似ているものである。iPhoneのような魅力的なデバイスと、iCloudのようなクラウドサービス、そして、iTunesのように欲しいコンテンツが手に入る環境を提供しているのと同じく、Watsonのような技術をベースに、クラウドとオンプレミスによるハイブリッド環境の提供、データマーケットプレイスによるサービスの提供を実現できる」などと述べた。

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