昨今、日本でもスポーツ分野における「勝つためのデータ分析」の重要性が認知され、試合中にタブレット端末が活用されているシーンを見かけることも珍しくはなくなってきた。ただ、データ分析をチームの「戦略」へと落としこむという観点では、欧米に比べ20~30年は後れをとっているとされる日本のプロスポーツ。この世界にMLB(メジャーリーグベースボール)の最新手法を取り入れるなどし、日本のプロスポーツの頂点に君臨するといってもいいプロ野球のレベルアップに専門家として貢献しているひとりがデルタの岡田氏である。本稿では、同氏が登壇予定のイベント「マイナビニュース フォーラム 2014 Winter for データ活用」(開催日: 12月9日(火) 会場: 秋葉原UDX)におけるキーノートセッション内容の一部をお伝えしよう。

マイナビニュース フォーラム 2014 Winter for データ活用」の参加申し込みはこちら(参加費無料、12月9日(火)開催、東京都千代田区、開場9:30~)

「ダメージコントロール」による弱者のための戦略とは

合同会社DELTA 代表社員 岡田友輔氏

岡田氏は同講演で、弱小チームが王者に競り勝った過去のシーズンの実例などをもとに、ビジネスシーンでも役に立つ「競合分析に基づいたダメージコントロールによる"弱者のための戦略"」を解説する予定だ。

素人的な筆者目線ではあるが、プロ野球においては、十分なデータ分析のもとにシーズンを通じて各チームが熱戦を繰り広げている……というイメージがある。岡田氏によれば、「打者と投手の対戦成績といった個別の分析はできており、これを戦術に反映させることはできている」そうだ。しかし、「このような分析をチームの"戦略"へと落としこむといったマクロ的な観点での分析は、ほとんどのチームができていない」という。冒頭で述べた、「欧米に比べ20~30年は後れをとっている」のは、この部分である。

野球の場合、メジャーリーグベースボール(MLB)とプロ野球の決定的な違いの1つに、「バックオフィスが有する機能の差」があるそうだ。投資額もケタ違いの規模となるMLBの場合、各種施策に関する失敗に対して寛容ではない。それゆえ、MLBにおけるバックオフィスは「"カイゼン"のダイナミクスさが日本とはまったく異なる」(岡田氏)という。

日本での無敗記録などの実績を買われて日本のプロ野球からMLBに移籍した……と思われがちな田中将大投手だが、実はMLB側では、日本での実績よりも、メジャーに来た場合の活躍度を重視しており、個々のデータ分析によって導き出されたその結果が、年俸額の根拠になっているそうだ。田中投手はMLBのシーズン途中に故障で戦列を離れたが、なんとMLB側では故障リスクも数値化されているという。

このように、プロ野球とMLBでは選手の評価尺度が異なるため、しばしば日本では目立った活躍をしなかった選手が、MLBで結果を残すといったケースが顕在化するというわけだ。そして、資金力のある人気チームより、資金力が乏しく、リーグ下位に低迷するようなチームの方が、このようなデータ分析の重要性が増してくる。

自分のチームのデータを正確に把握し、自分のチームの総合力を知る。そして、自分のチームのウイークポイントを知り、この傷口を広げずに補完するためのダメージコントロール策を講じ、「負けない」チームを作るための戦略を立案し、実行する。そして、"カイゼン"を繰り返す。これが "弱者のための戦略" である。

同氏は12月9日(火)開催予定の「マイナビニュース フォーラム 2014 Winter for データ活用」において、ビジネスシーンでも役に立つ「競合分析に基づいたダメージコントロールによる"弱者のための戦略"」を詳しく解説する予定となっている。分析ツールは導入したものの……企業でデータの「活用」に悩んでいるマネジメント層や経営企画部門、業務部門の方々必見の講演となるため、当日はぜひ会場に足を運んでいただきたい。