5月15日にNTTドコモとKDDIから、サムスン「GALAXY S5」の国内販売が開始された。製品自体は2月に発表。すでにグローバルで販売を行っており、同シリーズとしては初の防水防塵モデルであることや、高機能化したカメラ、心拍数センサーの搭載などが特徴となっている。すでに目新しさは無いが、ホームボタンには指紋認証機能を備えている。

iPhoneにも搭載されている指紋認証だが、iPhoneではサードパーティのアプリからは指紋認証を利用できない。一方で、サムスンはサードパーティと提携し、この機能を利用できるようにしている。こちらも既に発表されているが、eBay子会社で決済サービスを提供するPayPalと提携し、GALAXY S5の指紋認証を利用したよりセキュアで簡単な決済機能を提供している。今のところ、このような提携を行っているのはPayPalのみだ。

この機能を利用することで、GALAXY S5のユーザーはPayPalアカウントのIDやパスワードを入力することなく、PayPalの提供するネットショッピング決済サービスと、リアル店舗で"顔パス"感覚で決済を行える「PayPal チェックイン支払い」を利用できる。

普段持ち歩くことが多いスマートデバイスとしては、PayPalの提供する「チェックイン支払い」が注目を集めており、直近でもヤマダ電機が試験導入ではあるが、このチェックイン支払いを国内の大手量販店としては初めて採用している。また、ネットショッピングの購入デバイスとしてもスマートフォンの利用が急成長している。

GALAXY S5の指紋認証を利用したPayPal決済では、端末での指紋登録と登録した指紋とPayPalアカウントのひも付けを行っておく。なお、GALAXY S5端末にインストールするPayPalアプリは、ネットショッピングでも利用できる専用アプリとなっており、ダウンロードはGoogle PlayではなくSamsung Appsから行う。

チェックイン支払いでは、利用可能な店内(やその近く)でPayPalアプリを起動しサービスにログインするが、このログイン操作を指紋認証で行うことが可能となっている。あとは、利用可能な店舗一覧から「チェックイン」する。この時点で店舗側の端末に氏名と顔写真情報が送られ、あとはレジで「PayPalのチェックイン支払いを利用する」と告げるだけ。店舗側では表示された氏名と顔写真から本人であるかどうかを確認し、購入処理(ユーザから見ると支払い)をする流れになっている。この一連の流れで、財布やカードは必要なく、サインなども行わずに手元のスマートフォンでチェックインするだけで買い物ができるというわけだ。

ネットショッピングにおいても、支払いにPayPalを選ぶと、指紋認証を求められ本人確認が簡単に行えるようになっている。

でも、チェックイン支払いって利便性としてはおサイフケータイ(FeliCa搭載端末)と、ユーザー体験としてはそれほど変わらないのでは? ある意味それは正解だ。実際のところ、日本で現在提供されているPayPalのチェックイン支払いは、まだ発展段階。一歩先を行く米国では、店舗にチェックインすると商品リスト(飲食店ならメニューなど)が表示され、事前に注文と決済をしておくことで店舗ではレジにすら並ばす商品を受け取るだけというまさに「顔パス」なサービスも提供されている。

さらには、店舗にBeacon端末を設置し、利用者が店舗に訪れると自動的にチェックインするといった試みも行っている(もちろん利用者側でどの店舗に自動チェックインするかは設定可能)。ここまで来ると、もはやスマートフォンを操作する必要すらない。端末をポケットに入れたままで商品購入と決済が完了するという"常連さん+顔パス"のようなユーザー体験が実現されている。

このようなチェックイン支払いは、先ほど挙げたヤマダ電機のように大量に商品を扱う店舗や、比較検討しながら(場合によっては店員と値段交渉をしつつ……)買う商品だとその利便性をイメージしにくいが、例えば、近くのコーヒーショップを考えるとわかりやすいだろう。仕事の休憩時間にビル内のコーヒーショップへ行こうとする。まず、自席からPayPalアプリでログインし、コーヒーを注文し、決済。注文内容と顔写真が店舗側へ送られ、歩いて店舗に行き、着く頃にはできたてのコーヒーが用意され、顔写真と照合して商品が渡され、レジにも並ばず受け取れるわけだ。

日本ではPayPalのチェックイン支払いの提供開始からまだ半年ほどで、米国のようなサービスは提供されていない。しかし、リアル店舗での「支払い」というユーザー体験を大きく変える可能性を持っているとも言え、同社としても早期の導入を目指しているという。

このような中で、IDやパスワードを入力すること無く、よりセキュアで手軽に認証を行えるようになった両社の提携だが、今はまだ「ちょっと便利に支払いができる」といったレベル。クレジットカードやキャッシュカードなどの情報をデータとして持ち「モノとしてのお財布が必要ない世界を実現す」。日本においては、そのような利便性や革新性の本当の姿を見せるのはこれからだ。