JR東日本は3月20日、Suicaデータの社外提供に関する有識者会議の中間とりまとめを受領、公表した。Suicaデータの社外利用については、2013年7月にJR東日本が日立製作所に利用データを販売すると発表。これを受けて利用者から問い合わせや意見が殺到しJR東日本が謝罪する事態まで発展した。

有識者会議は、2013年9月に設置し、2月までに5回開催。会議の委員は、一橋大学名誉教授の堀部 政男氏ら4名で、「2013年7月提供のSuica分析用データの問題整理」と「今後の社外への提供」について検討を行なった。

とりまとめ資料によると、有識者らはJR東日本が公共性の高い企業でありながら「事前説明や周知を行なわず利用者への配慮が不足していた」と指摘。

その一方で、現行の個人情報保護法の「個人情報」に当たらないような一定レベルの匿名化処理が行なわれていたため、特定の個人を識別できない状態になるとの法の解釈運用に努めていたことは評価した。しかしながら、個人情報の定義における「特定の個人の識別性」については専門家の間でも解釈に幅があるほか、現時点で個人情報保護法の法改正が検討されていることから、今後の動向に注視する必要があるとした。

Suica分析用データは利用者個人を特定・識別しない形で日立製作所に提供されていた

また、プライバシー保護の観点では、一定レベルの匿名化処理と日立製作所との間で特定の個人を識別することを禁止する契約をしていることから、個人のプライバシーが侵害される恐れはただちに考えられないとの結論を下した。しかし、この面でも今後「技術の進展に伴って特定の個人が識別されるようになり、新たな問題が生じる可能性も考えられる」として、今後も継続して最善と考えられるプライバシー保護の配慮を行なうべきとの意見をまとめている。

Suicaデータを社外で活用する点については、「自社サービスの品質向上だけではなく、自然災害発生時の対応や地域ごとのマーケティングといった活用範囲の拡大が期待できる」と評価。しかし、利用者の安心・安全性を高めるために「集合匿名化」を行なった場合、相当数の利用者データが使用できなくなるため、「分析結果の精度が低下する課題も出てくる」との懸念もあるとしている。

最終的に有識者らは、「今回の問題で経験したことを活かして、法改正や技術の進展など社会動向を注視しながら、利用者が安心・納得できるデータ提供の在り方を多角的な観点から検討すべき」との中間結論を出した。また、利用者に対しても「ビッグデータが生み出す価値が社会に理解されるよう、公益性の高い統計情報を公表するといった積極的な活動をJR東日本は行なうべき」としている。

これを受け、JR東日本は「法改正の動向などを注視すべきとの有識者会議のアドバイスを受けたことから、引き続き、社外へのデータ提供は見合わせる」としている。