米Piston Cloud Computing(以下、Piston)のクラウドソフトウェア「Piston OpenStack」は、OpenStack技術をベースとしたプライベートクラウドの構築を強力に支援する"クラウドオペレーティングシステム"だ。

Piston Cloud ComputingのWebサイト

OpenStackは、コンピューティングやネットワーキング、ストレージなどのコンポーネントを自由に選んで、あらゆるタイプのクラウド環境を構築でき、可用性や柔軟性の向上、コスト削減を図れるオープンソース技術として注目されている。

しかし、Pistonによれば、「OpenStackはフレームワークであり、自由度が高い反面、ユーザーはどれを用いればよいのかわからなく悩んでしまう。また、求められる専門知識や設計力も非常に高い」という。

これを解決するために、ベンダーはさまざまなアプローチを採っているが、Pistonが提供するのは、OpenStackをベースにさまざまな独自機能を追加したソフトウェアプロダクトだ。ユーザーは、大きなハードルとなるサービス設計や構築、リソース管理の手間を省き、OpenStackの活用に注力することができる。

OpenStackに足りない機能を独自技術で提供

Piston OpenStackのベースはOpenStackであるため、ダッシュボードやコマンドライン、AWS API群などのインタフェースはそのまま利用することができる。ベンダー各社が協力して作り上げているOpenStackの標準仕様に則ったシステムを構築でき、技術情報の入手やハイブリッドクラウドの実現が容易になるなどの利点がある。

図1: Piston OpenStackの構造

Piston OpenStackでは、ストレージ管理に「CEPH」、ハイパーバイザーに独自チューニングした「KVM」、ネットワークに「OPEN vSWITCH」を用いている。これらの技術を固定することで、設計や運用を自動化・簡素化できるというわけだ。

分散ストレージ「CEPH」

上記のうちCEPHは、PCサーバを並べるだけでストレージクラスタ環境を容易に作ることのできる分散ストレージソフトウェアであり、OpenStackの関係者に人気が高い。

CEPHは、後述するPiston OpenStackの独自機能を担う中核技術でもあるが、仮想マシンの外部ボリュームとして使用できる点も大きな魅力だ。

サービスを冗長化するHA機能「MOXIE HA」

Piston OpenStackの中でも特徴的なのが「MOXIE HA」だ。OpenStackでは、ネットワークや仮想マシン、ダッシュボード、認証など、さまざまなコンポーネントで構成されているが、それらのサービスを冗長化し、自動的に可用性を高めることができる。

通常のOpenStackの場合、仮想マシンをどの物理サーバで稼働させるか、冗長構成はどうする、スケーラビリティはどうする、などと細かく設計していく必要がある。しかしPiston OpenStackの場合は、並列されたどの物理サーバでも、すべての機能を使えるようになっている。

MOXIE HAにより、例えば、認証サービスが起動していたある物理サーバが突然ダウンしたとしても、ほかの物理サーバでサービスを自動的に引き継がせることができ、バーチャルIPを用いてアドレスが変化しないようになっているため、透過的に利用することができる。

ベアメタル機をつなぐだけで必要環境を自動構築する「CloudBoot」

拡張性という面では、もう1つの特長である「CloudBoot」が貢献する。OSのないベアメタル環境のPCサーバをネットワークに接続するだけで、Piston OpenStackのソフトウェアが自動的にインストールされ、リソースプールに加えられる。CloudBootは、最初のイントール時から効果的に機能し、ベアメタル環境から約10分でPiston OpenStackを利用できるようになる。通常のOpenStackの場合、設計も含めれば最低でも1カ月はかかるところだ。

また、CloudBootは、ソフトウェアのアップデートを自動的に行うという特徴もある。しかもアップデート対象サーバ上の仮想マシンを別のサーバにマイグレーションしながら、1台ずつ順番にアップデートするのでサービスを止める必要がない。作業時間の問題などからアップデートを放置しているマシンも少なくないが、そうした問題を回避できるのは大きなメリットだろう。

仮想メモリ管理「Virtual Memory Streaming」

特にVDI環境を構築する場合、仮想メモリ技術を使ってパフォーマンスを向上させる「Virtual Memory Streaming」も重要だ。仮想マシンの起動が早くなるため、ライブマイグレーションのダウンタイムを最小限にすることも可能である。

ハードウェア構成は2パターン

Piston OpenStackのハードウェア構成は以下のように2通り用意されている。コアネットワークに接続する10GbEスイッチとしてArista Networksの製品を採用すれば、ブートノードを兼務させることも可能である。

図2: Piston OpenStack環境のハードウェア構成。Arista Networksのスイッチを採用すれば、ブートノードのハードウェアを1台省略することが可能だ

Piston製品の国内販売代理店である東京エレクトロンデバイスでは、Piston OpenStackの導入を検討するユーザー向けに、新宿オフィスにてPoC(Proof of Concept)環境を用意し、ユーザーの要望に合わせたテストやデモンストレーションを行っている。なお同社では、ハードウェアを含めたこの環境をパッケージ化して販売する予定だ。

Supermicroのサーバ(7ノード)を用いたPoC環境。ブートノードの兼務するArista Networksのスイッチが上部にある(右端のUSBが図2のCloudKeyにあたる)。写真には写っていないが、マネージドスイッチにはExtreme Networksの製品を使っている