ビジネスにおけるITの活用が不可欠の現在、その管理運用を担う「情報システム部門」は、企業の情報活動を支える重要な部門である。であるにも関わらず、単なるコスト部門として軽視している経営者も少なくはない。

今後、ビジネスを展開していくには戦略的なITの活用が不可欠である。その為には、情報システム部門はもちろんのこと、経営者自身の意識改革も必要となる。

2013年10月17日、情報システム部門向けセミナーとして「今、求められる攻める情報システム部門」が開催された。

今回は、基調講演として行われたブリッジ・リサーチ&コンサルティング合同会社 代表社員 阿部 満氏による「クラウド徹底活用で、経営の情シスを見る目が変わる!戦略部門としての"提案型"情シスになるには? 」の内容についてレポートする。

5年間で1,000社以上の中小企業のIT戦略を見てきた阿部氏による講演は、独自に集めたデータを紹介しながらの興味深いものとなった。

ITを重視する企業ほど、業績が良くなる

ブリッジ・リサーチ&コンサルティング
合同会社 代表社員 阿部 満 氏

まず、阿部氏が最初に提示したものは、ITの活用と業績の関係を表した資料である。それによると、ITの活用を「経営の重要課題」と位置づけている企業では、46%が増収傾向(過去5年間)にあった。一方、「経営課題ではない」と位置づけている企業の場合、増収傾向は19%に過ぎず、逆に43%が減収傾向にあるとのことである(※)。

勿論、業績に関しては様々な要因があるので、一概には言えないが、ITの有効活用に対する意識が高い企業ほど、成長する傾向があることは事実である。

「ただし、単にITを導入すれば業績が良くなる訳ではありません。ITはあくまでも道具です」(阿部氏)

その道具を、如何にして有効活用するのか、これからの企業が成長するかどうかは、それに掛かっていると言っても過言ではない。

※三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「ITの活用に関するアンケート調査」(2007年11月)

クラウドの有効活用により、情シス部門が戦略部門として機能

現在の企業において、情シスに求められるものの多くはシステムの安定稼動である。その結果、情シス部員達はシステムの保守・運用などの業務に謀殺されることとなる。

情シス部員は、ITという道具の使い方を最も良く知っている人たちである。その彼らが、日々の業務に忙殺されていては、ITの有効活用などできるはずもない。では、どうすれば情シス部門が戦略部門に生まれ変われるのか。その手段として、阿部氏は「クラウドの活用」を提案した。

クラウドであれば、ハードウェアやアプリケーションなどが不要なため、保守・運用に掛かる手間を、かなり軽減することができる。

「クラウドの活用によって、情シスの方々は、日々の雑多な業務から解放されることでしょう。そうすれば、戦略的なIT利用を策定する余裕も生まれてきます。そして情シスは、コスト部門から、利益を生み出す戦略部門へと生まれ変わることができれば、企業は大きく成長する事ができます」(阿部氏)

クラウドの利点は、保守・運用だけではない。ネットさえつながる環境であれば、職場だけではなく、出張先や自宅からもデータにアクセスが可能なため、作業を行うことができる。クラウドを利用すると、仕事のあり方そのものが変わる可能性もある。

なお、現在のクラウドサービスは、阿部氏によると大きく分けて、インターネットを経由してソフトウェア機能を利用するSaaS(Software as a Service)、ハードウェアや開発ツールなどのプラットフォームを利用するPaaS(Platform as a Service)、サーバー環境の仮想化技術を使うIaaS(Infrastructure as a Service)の3つに分類される。

また、クラウドの活用については拠点外でも利用できる「パブリック・クラウド」と、事業所などの限られた拠点のみが利用できる「プライベート・クラウド」の2つに分類される。

阿部氏によると、現在の主流サービスはSaaSで、パブリックとプライベートを組み合わせた「ハイブリッド・クラウド」と呼ばれる利用方法が増えていくだろう、とのことだ。

クラウド活用に関する2大分類

縦割りの壁を突破する情報システムの提案を

当日のセミナーでは、中小企業による戦略的ITの活用事例として、経済産業省による「中小企業IT経営力大賞」の優秀賞を受賞した企業の取り組みが紹介された。

都合により詳細は省くが、それらの事例に共通することは、縦割りの情報共有ではなく、各部門が横割りで課題を出し合い、経営戦略に沿って最適なシステムとは何かを模索していく過程だ。つまり、戦略的にITを活用するには、情シスだけではなく、経営者も含めた会社全体で取り組む必要があるのだ。

「部門間の壁、企業間の壁、日本には、これらをなかなか乗り越えられない企業が多い。そのためにシステムが分断化され、データが分散化する。これではデータが連動しないので戦略的な活用はできません。そして何より、効率が悪くなります」(阿部氏)

これからは、ビジネスが大きく変化する。そのような環境に適用するためには、臨機応変なシステム構築が必要となる。その為にも、これらの壁を突破する情報システムの提案が必要になる。

「是非、そのような提案を経営陣にぶつけてください。そうすれば、必ず企業は成長するのです」

そんな阿部氏によるメッセージによって講演は好評のまま終了した。

講演資料のご提供

本稿でご紹介いたしましたブリッジ・リサーチ&コンサルティング合同会社 代表社員 阿部満氏による『来たれ!! "ひとり情シス" ― 1000社以上の企業を見たコンサルが語る「これからの情報システム部門」― クラウド徹底活用で、経営の情シスを見る目が変わる!戦略部門としての"提案型"情シスになるには? ―』の当日講演資料を配布しております。ぜひ、レポートと合わせてご覧ください。

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