これまでは企業が扱うことのできなかった膨大な量のデータ、もしくはその価値に気づかずに利用して来なかったデータを分析し、ビジネスに役立つ提案を行うデータサイエンティスト。過去にも増してデータ活用の重要性が問われる昨今、彼らは世界中で"引っ張りダコ"。新たに雇用するのが難しく、育成にも時間がかかるため、その需要は急激に高まっている

そんな時勢において、データサイエンティストの専門部隊を組織し、業務変革の実績を上げているのが大阪ガスだ。本誌は、同社 情報通信部ビジネスアナリシスセンターの所長、河本薫氏に、同社におけるこれまでの取り組みと、データサイエンティストに求められる資質などについて話を聞いた。

データサイエンティスト企画 レポート

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他社に先駆けた、データサイエンティストの専門組織

大阪ガス 情報通信部ビジネスアナリシスセンターの所長の河本薫(かわもと かおる)氏。著書に『会社を変える分析の力』(講談社現代新書)がある。

大阪ガスのビジネスアナリシスセンターには現在、9人のデータサイエンティストが所属。年間約30ものデータ分析プロジェクトを行い、大小合わせて100近い分析ソリューションを提供している。そのサービス対象は社内の全組織、さらにはグループ企業にまで及んでいる。

それぞれのデータサイエンティストは、地球温暖化問題についての博士号を有していたり、気象予報士であったり、IT/リスク分析/統計/数理計画それぞれのプロであったりと、さまざまな領域の専門家である。しかし全員に共通しているのは、対象事業に関する深い知識と統計分析をはじめとする各種分析手法のノウハウを持っている点だ。

彼らは、ビジネス現場からビジネスに役立つ分析課題を発掘し、ビジネスを意識したデータ分析を行い、そして実際にビジネスに役立つまで現場を支援しながら結果を見届けるのを使命としている。

「データサイエンティストというと"分析の力さえあればいいのだ"と誤解されがちですが、それ以上にビジネスマインドが求められる職種です。データ分析力やビジネス関係の知識はもちろんのこと、現場から新たなニーズを引き出し、また分析ソリューションを現場に受け入れてもらえるよう提案できるコミュニケーション能力が非常に重要です」と、河本氏は一般的なイメージとの違いを強調する。

大阪ガスのビジネスアナリシスセンターの特徴の1つに、独立採算制をとっている点があり、提供したサービスの内容に応じた対価を各ユーザー部門に請求している。そうすることで、データ分析を委託する側にも責任感が芽生えるし、データ分析をする側も、最終的にどれだけビジネスに役立ったかをより重視するようになるという。

「データ分析は10年以上前からやっていましたが、当初はなかなかうまくいきませんでした。どうしても"データ分析の便利屋"という立場になり、頼まれた仕事だけやる受託型のチームとなってしまっていたんです。そこで提案型の業務へと転換することで、本来あるべきデータサイエンティストとしての力を発揮できるようになりました」(河本氏)

>> 河本氏が重視する能力とは?