富士通研究所は仮想環境の性能問題の原因を特定する性能分析技術を世界で初めて開発したと発表した。

仮想環境の普及にともない、エンドユーザーでは「原因不明の突発的な性能劣化が起こる」「期待通りの業務性能が得られない」といった事象が多く見られるようになっている。その理由としては、1台の物理サーバ上に、複数のVM環境、およびVM機能を提供しているハイパーバイザーの環境が混在しているために、環境が複雑化しており原因特定が難しくなっている、VMは実際にはハイパーバイザーにより切替えられて動作しているので、単体VMだけの性能監視・分析では性能の正確な把握ができないといった点があげられるという。

従来、仮想環境での問題発生時に、仮想環境全体の挙動を分析可能なツールがなく、アプリケーションレベルで「なぜ」遅くなったのか根本原因を特定することが困難だったが、今回、富士通研究所では、仮想基盤のハイパーバイザー上で各仮想マシン(VM:Virtual Machine)のユーザープログラムの動作情報を採取することにより、一元的なプログラムの挙動分析を実現した。

これにより、ハイパーバイザー内の処理からVM上のOSやユーザープログラムの処理までの性能を分析し、挙動を把握することが可能となるという。

今回富士通研究所が開発したのは、仮想基盤のハイパーバイザー上で各VMのユーザープログラムの動作情報を採取することにより、ハイパーバイザー内の処理から各VM上のOSやユーザープログラムの処理までの性能を迅速・正確に分析する技術。

測定フェーズでは、各VM上のユーザープログラムの動作情報を、それぞれの該当VM上ではなく、VMの切替え処理を活用してハイパーバイザー上で一元採取。マップ情報生成フェーズでは、測定フェーズで採取したデータを、アプリケーション名や処理関数名などのシンボル名に変換するためのマップ情報を各VM上で作成する。

そして、測定フェーズで採取した各VM上のユーザープログラムの動作情報と、マップ情報生成フェーズで生成したマップ情報とを照合し、各VM上の動作プログラムの実行内訳をハイパーバイザーの時間軸で一元分析する。

VM性能分析処理の流れ

ハイパーバイザーに本機能を組み込むだけで、各VM上のOSやアプリケーションの変更を必要とせずに、ブラックボックス化している仮想環境の性能分析と可視化を実現するという。

現状はKVMで実験しているが、他のハイパーバイザーにも応用が可能だという。同社では今後、本技術を2013年4月より、富士通Linux技術支援サービスでの利用を予定している。