川口市役所

業務端末に仮想化を取り入れ、地域プラットフォームの仕様を採用しながらも独自にクラウド技術の採用を進めているのが、埼玉県川口市だ。今回は、50万人以上の人口を有する大規模自治体の取り組みについて紹介しよう。

埼玉県南部に位置する川口市の人口は、2011年3月1日現在で約51万7,000人と非常に多くの人が暮らしている。中央に鳩ヶ谷市を抱えたドーナツ型の地形だったが、その鳩ヶ谷市とも今年の10月には合併が予定されており、実現後は57万人程度の人口規模になる。

規模が大きいために、一般的な市区町村向けの自治体クラウドは活用しづらい。そのため同市では、クラウド技術を利用した業務効率化に独自で取り組んでいる。そのスタートとして、仮想PCの活用が開始されている。

川口市では、従来は各部署ごとに電算処理担当者が存在したが、2007年の組織改正によって全体の電算業務を担当する情報政策課が作られ、縦割りの組織から横串の通った調達が可能になった。この情報政策課が担当しているのが、電子自治体構築計画だ。これは、平成17年に作成された情報基本計画に基づいて作業が行われている。

機器構成概念図

地方自治体では、まだ多くのメインフレームが稼働しており、川口市でも長くメインフレームが使われてきたが、ホストコンピュータの寿命が近づいていることや、2007年問題によるメンテナンス人員の不足、法改正への迅速な対応の難しさからオープン環境への切り替えが進められている。その中で、仮想化技術が取り入れられた。

川口市 企画財政部 情報政策課 課長補佐兼システム開発係長 大山水帆氏

「オープン化にあたっての前提として、Web技術を活用するというものがありました。しかし、ブラウザのバージョンによって動かせるシステムが違ってきます。そのため、1台の端末で環境を切り替えて利用できる仮想化に目をつけました」と、企画財政部 情報政策課 課長補佐兼システム開発係長の大山水帆氏は語る。

問題となったのは、Internet Explorerのバージョンだった。先に作られすでに稼働している福祉のシステムはIE6での稼働が前提とされており、新たに作られた介護保険業務用のシステムはIE8を前提としている。どちらも福祉関連システムであり、同一担当者が双方の情報を必要とすることも多い。

川口市の情報関連政策は、2000年の地域イントラネット構築計画から始まる。しかし情報政策課が作られ、本格的な取り組みがスタートしてからはわずか2年半程度だ。そのため、初期に構築したシステムもまだ稼働してからそれほどの時間がたっていない。

川口市 企画財政部 情報政策課 システム開発係 初見卓也氏

「福祉システムを作った頃は、まだIE6で作るべきだと言われたのに、今はもうIE8が当たり前です。ちょうど過渡期だったということもありますが、システムのライフサイクルを考えると福祉システムを再構築するわけにはいきません。また、他のシステムでも利用しているOfficeのバージョンが違うものが混在するなど、1台のPCで複数業務をこなせない問題がありました。効率化とともに、セキュリティも考えると画面転送方式のシンクライアントが良いと考えました」と、企画財政部 情報政策課 システム開発係の初見卓也氏は語る。

Citrix XenAppによって、IEの異なるバージョンを利用可能にしている