Mozilla Labs - Laboratories are where science and creativity meet to develop, research, and explore new ideas.

Mozilla LabsのAza Raskin氏がブラウザを使った作業効率を改善するための新しいアイディアをHow China’s Great Firewall Can Make Us More Productiveで発表している。中国のGreat Firewallの経験をもとにした発想でなかなか興味深い。Aza Raskin氏はUbiquityやJetpackのオリジナル開発者。FirefoxのUIチームとの作業もしているようだ。Firefoxにおける新機能や新発想を現実のものに変えるのが仕事といっていいポジションにある。

Aza Raskin氏は北京を訪れたときの経験を紹介。中国では一般にGreat Firewallと呼ばれるファイアウォールが機能しており、国外のコンテンツに自由にアクセスできるとは限らないようになっている。氏はたぶんブロックされているだろうと思いながらもBBCにアクセスすると、意外にもアクセスできたという。しかしロードは遅く、そして変な動きだという。氏は背後で何が起っているかだいたい憶測がついているにもかかわらず、遅いロードのいらだちがGreat FirewallではなくBBCに向かっていることに気がついたという。

これと同様のトリックを使ってブラウザを使った作業効率を改善しようというのが氏の提案する「プロダクティビティプロキシ」だ。たとえば就業時間中にmixiアプリにアクセスしたり、2chやニコニコ動画にアクセスするのは業務としては相応しくないことが多いだろう。しかしブロックツールを入れてアクセスをブロックしても、結局はうまくいかない。理由は簡単だ。アクセスできないいらだちはブロック機能に向き、結局はブロック機能を無効にしてしまうか、ほかの方法でアクセスするようになるからだ。新しいことを知りたいという欲求を止めることは容易ではない。

プロダクティビティプロキシではコンテンツへのアクセスはブロックしない。かわりに、たとえばその日の最初のアクセスはフルスピードで実施されるものの、以降は散文的にロードが遅くなるようにする。数秒して目的のサイトが表示されないと、自然とサイトを閉じ、本来すべき作業に戻るようになるという。人間は新しいものを知りたいという欲求があり、作業中であってもついほかのサイトを開いて新しい知識を得ようとする。それは面白いことであったり暇つぶしであったりするかもしれないが、ともかくそうすることで脳は満足感を得る。ブロックせずにあえて遅くロードすることで、いらだちはそのサイトへ向き、自然とそのサイトを開かなくなる。結果として本来作業すべきことに集中することになる、というわけだ。

このアイディアの要は、サイトが遅くロードされたときに、直感的にプロダクティビティプロキシに嫌悪感が向けられるのではなく、対象となるサイトに対していらだちが向く点にある。このため、プロダクティビティプロキシの機能を無効にする確率が減るというわけだ。How China’s Great Firewall Can Make Us More Productiveはアイディアを発表した段階にあり、Mozilla Labsのプロジェクトになったわけでもない。しかし作業効率を改善するテクニックやアイディアとして参考になる。