Windows Internet Explorer 9

主要ブラウザがいまこぞって開発を進めている分野がGPUやH/Wを活用したレンダリング性能の向上だ。レンダリング、グラフィックや動画のデコード、テキストのレンダリング、画像データの加工などの処理にGPUを使うようにすると、性能の向上や品質の向上が見込めるだけではなく、CPU負荷が低減するためその分ブラウザのほかの処理をCPUに回すことができるという利点もある。

どのブラウザでもGPUを活用するための取り組みが進められているが、今もっとも進んでいるのがIE9だ。クロスプラットフォームで展開しているほかの主要ブラウザと異なり、Windowsというプラットフォームに固定されたIEはそれだけOSの提供する機能を使いやすい立場にある。Windowsの提供するGPUを活用するための機能をもっとも最初に取り込みやすいブラウザといえる。

IEBlog : Benefits of GPU-powered HTML5においてどういった技術がIE9で活用されているかが紹介されている。紹介されている内容を簡単にまとめると次のとおり。

IE9におけるH/Wレンダリングの利用内容
Windows Media Foundationを使ったHTML5 Videoの再生。利用できるH/W(GPU)がある場合、それを利用してデコードやレンダリングが実施される。より低いCPU負荷でより高画質な動画再生が可能。
Windows Imaging Componentを使ったPNG、JPEG、TIFF、JPEG XRのデコードを実施。
DirectWriteを使ったテキストのレンダリング。より高品質で高速なテキストレンダリングが可能。
XPSを使った高品位印刷。
IE9は基本的にDirect2Dをベースにしてレンダリングを実施している。GPUを活用するためよりスムーズなグラフィックレンダリング、よりスムーズなアニメーション、グラフィックスケーリング、より高いフレームレートでの動画再生などが実現される。利用できるH/Wがない場合にはCPUでソフトウェア的に処理が実施される。
レンダリングの多くのシーンでGPUが利用され、CPUの負荷が減る。その分、ほかの処理をCPUで処理できるようになる。
画像やテキストのズームにはGPUが活用されている。より高速なズーミングが実施される。

ほかの主要ブラウザはクロスプラットフォームという点も考慮したGPUやH/Wの活用が必要になるため取り組みが遅れがち。ただしWindowsプラットフォームにおいては最終的にIE9が採用したのと同じ技術を基盤技術として取り込んで活用することになるとみられる。Mac OS XやLinuxではWindowsの場合とは違う技術を取り込んでGPUを利用する必要がある。