情報の番人を務める「ナレッジ・コミュニケーション・センター」

三菱東京UFJ銀行 法人企画部 法人基盤企画室 三谷佳子氏

法人部門でこうした業務を一手に引き受けているのが「ナレッジ・コミュニケーション・センター(KCC)」だ。奥村氏と三谷氏とアシスタント2名の計4名で全情報を精査する。発信される情報の品質を維持する番人であり、現場をサポートする目利きでもあるKCCの活躍によって、現場に届けられる情報の品質と鮮度が保証されている。

「私たちは全業務に精通したスペシャリストというわけではありません。だからこそ、逆に誰が見てもわかりやすい情報かどうかを判断できると思うのです。情報にアクセスする人がその業務に詳しいとは限りません。現場のすべての人に理解してもらえる情報を提供したいと考えています。また、こういう立場だからこそ修正をお願いしやすい面もあります。素人の強みですね」と三谷氏。

発信者とのコミュニケーションも十分にとり、気持ちよく対応してもらえる環境作りを心がけているという。頭ごなしに違反を指摘するのではなく、情報が一層活用されるための「提案」として対話する。これも「人」が業務を行っているから成せる業だろう。

ポータルには、現場行員のニーズが高い情報を厳選して掲載している。よく「検索」されている情報は、現場のニーズも高い。ポータル上の目立つところに適切な分類とともに示せば、わざわざ検索するムダもなくなる。

「現場からは"(ポータルが)わかりやすくなった"と言われています。今後はさらに"業務に情報が生きた、成果があった"と感じてもらえるように、改善を続けていきます」と奥村氏は語る。この第2フェーズが開始された後、ポータルのアクセスユーザー数は1日3,000を超えるようになった。これは以前の1.5倍に相当するという。

利用の実態を的確に把握できる「ナレッジスコアカード」

さらに、これら法人部門内に流通している情報の利用状態についても「人の声」で評価する仕組みが作られている。同部では、バランス・スコアカードをヒントにした「ナレッジ・コミュニケーション・スコアカード(KCSC)」と呼ばれる効果測定指標をまとめた評価シートを構築。これは情報の利用実態を把握し、改善点を洗い出す仕組みだ。

具体的には、部門ポータルや情報共有システムなどの法人部門で使用する各種情報系ツールについて、ログ分析、モニタリング・アセスメント、アンケートなどを実施し、定量的・定性的に実態を把握するデータが並ぶ。

アンケートの回答率は現在利用者の1割程度にとどまっているが、これは完全に任意での回答となっているからだ。「アンケートはもちろん、ポータルの利用も強制はしていません。情報は必要を感じた人が主体的に利用するものですから、押し付けでは浸透しないと考えているのです」と奥村氏。

そのせいか、ユーザーからは「もっと周知すべきだ」という声も出ているという。「"こんなに便利なものがあるならもっと早く知らせて欲しかった"という声もあります。任意アンケートですから厳しい意見を覚悟していたのですが、むしろ建設的なアイディアや応援のメッセージが多く、KCCメンバーにも励みになっています」(奥村氏)

KCSCは半期に1度の実施だが、このほかリアルコムから提供されるレポートを活用し、日次・月次のサイクルで小さな改善を積み重ねている。人の手で動かすポータルならではの迅速さと機動力がある。

「システムで自動化するのはある意味"ラク"ですが、柔軟さでは人手に及びません。部門ポータルのHTML更新も、常時閲覧者3,000名への効果を考えればそれほど大変とは感じていません」と奥村氏。今後、法人部門で開始した「人の目による」情報活用度向上への取り組みを、同行全体にも展開したいとしている。

三菱東京UFJ銀行 法人営業部の部門ポータルのトップページ。HTMLファイルのトップページは人の手によりで更新されている