ウォッチガード・テクノロジー・ジャパンは2月10日、コンテンツセキュリティ・アプライアンス「WatchGuard XCS」を発表した。これにより、これまで主にネットワークセキュリティ・アプライアンスを提供してきた同社がカバーする範囲が広がったことになる。今回、米WatchGuard Technologies Field and Channel Marketing WW Directorを務めるMark Romano氏とウォッチガード・テクノロジー・ジャパンの代表取締役を務める本富顕弘氏に、2010年の同社のビジネスについて話を聞いた。

既存製品の機能拡張、新製品/サービスのリリースで2ケタ成長を達成

WatchGuard Technologies Field and Channel Marketing WW Director Mark Romano氏

Romano氏は「2009年はアジア/米国/ヨーロッパのすべての市場でプラス成長となり、また、すべての四半期で2ケタ成長を果たした。レコードイヤーとなった2009年は、正に"飛躍の年"だった」と、昨年の好調ぶりをアピールした。「景気後退の影響を受け、企業はITコストを削減する傾向にあるが、セキュリティニーズの高まりから、当社の業績は右肩上がりに成長している」

同氏が2009年を"飛躍の年"と言うのには理由がある。7月には、UTMの新シリーズ「WatchGuard XTM」の新OS「Fireware XTM」が発表された。「XTMシリーズの最大の特徴は管理機能がすぐれている点。Fireware XTMを搭載している複数の機器の設定を1ヵ所から行うことができるため、機器ごとに管理コンソールを用意する必要がない」

8月には、メールとWebのセキュリティ・コンテンツ管理製品を扱うベンダー、BorderWare Technologiesを買収した。国内では今年2月、BorderWareの製品の提供が同社のブランド「WatchGuard XCS」として開始された。これにより、同社はメールとWebを対象としたコンテンツセキュリティをカバー範囲に加えることとなった。

さらに今年12月には、新たなビジネスモデルとして、セキュリティサービス「Managed Security Services Program」が発表された。「昨今の不況により、中小企業はハードウェアを買い換えたり、ネットワークセキュリティをアップデートしたりするのが難しい状況にある。その打開策が、セキュリティをアウトソースすることだ」と同氏。

"ネットワークセキュリティ"の企業から"ビジネスセキュリティ"の企業へ

ウォッチガード・テクノロジー・ジャパンの代表取締役 本富顕弘氏

一方、本富氏からは日本市場について説明がなされた。同氏は、「XTMシリーズ、SSL-VPN製品、Managed Security Servicesを提供してきた2009年の当社のビジネスのテーマは"ネットワークセキュリティ"だった。しかし、これらにメールとWebのセキュリティをカバーするXCSシリーズをリリースした2010年のビジネスのテーマは、ネットワーク、メッセージング、Webの3つのエリアをカバーする"ビジネスセキュリティ"に広がる」と、今年は同社のビジネスが拡大することをアピールした。

ターゲットとする市場も、XTMシリーズ、SSL-VPN製品、Managed Security Servicesは小企業から中堅企業としていたところ、XCSシリーズでは大規模企業やデータセンターをターゲットとしており、市場の幅も広がることになる。

同氏は同社のUTM製品の強みについてこう語る。「一般にUTMのパフォーマンスはスループットで測ることが多いが、そうとも限らない。"Miercom Test Lab"の検証で、当社のUTM製品であるFireboxは99%の脅威をブロックした。これは、プロキシ技術とシグネチャによる検出技術を組み合わせているからできたこと。Fireboxの後継製品であるXTMシリーズはこの技術を踏襲するとともに、スループットも強化されている」

Managed Security Servicesは同社が「セキュリティの見える化」と呼ぶ管理サービスで、ログの集積、機器の運用状況のモニタリング、レポーティングなどを提供する。「他社の製品を用いてManaged Security Servicesと同等の内容のサービスを実現しようとすると、高価なソフトウェアが必要になる。しかし、当社は機器に標準でサービスを利用するための機能を搭載しており、サービスの利用料金を支払うだけで、きめ細かなサービスを利用できる。このサービスは専門のセキュリティ管理者がいない中小企業で特に好評だ」と、同氏は自信を見せる。

「クラウド時代に突入すると、ますます"セキュリティの見える化"が重要になる」と、語る同氏。同社の今後の展望としては、「XCSシリーズの管理機能の拡張」、「XTMシリーズとXCSシリーズの管理機能の統合」などが予定されているという。

市場調査会社によると、今年いっぱい企業のIT投資の抑制傾向は続くが、UTM市場は成長が見込まれるという。そうした市場の動きを裏付けるべく、今年に入って、さまざまなUTMベンダーが新製品を投入している。今年、UTM市場を制するのはどのベンダーとなるのか? UTMベンダーの動向から目が離せない。