ユーザーの「気づき」を促す効率的なPCDAサイクル

SAPインサイドセールスにおけるBI活用は、現在の段階で次のような効果を生み出しています。

まず、それぞれのテリトリーを持つ営業担当者に対して、KPIに基づく各案件の進捗をセルフチェックできる機能を提供します。これにより、自分の目標の達成率を確認しながら、PDCAサイクルを回すことができるようになりました。

また、各案件の管理を営業担当の属人的な手法に委ねていると、どうしても取りこぼしが発生します。これらを解消するために提供しているのが、「気づき」の仕組みです。滞留案件などの情報をマネジメント側からプッシュ型で提供することで、各担当に「気づき」を与え、あるべきプロセスへの軌道修正を促しています。(図3参照)

図3: トークタイム分析例 インサイドセールスのKPIの進捗を定期的にセルフチェックすることによって、各自の目標達成率を確認しながら普段のオペレーションを改善していく。

一方、マネジメント側の効果としては、まず迅速なフォーキャスト(予測)が可能となり、意思決定のスピード化が図られたことがあげられます。SAP BusinessObjectsの導入前は、1つの予測分析を行うために、Microsoft Excelを使って複数のデータをつなぎ合わせる必要がありましたが、SAP BusinessObjectsでは、すべての案件情報を1つのデータソースに組み込むことで、必要な分析結果を瞬時に引き出すことができます。また、各担当のPCに埋もれていたExcelデータを集約することで、会社の業務資産として活用できるようになった点も大きな変化です。

上長と部下のコミュニケーションも密になりました。データの加工、抽出に8割、コミュニケーションに2割といった従来の時間配分が、今は逆転しています。しかも、データそのものの信頼性が高いことから、1つの課題に対する具体的な解決策の立案など、より意味のある業務に多くの時間を費やせるようになりました。

なお、SAPインサイドセールスでは現在、日々の活動に関する20種類のレポートを作成しています。そのうち業務の中で恒常的に用いられているものは5種類で、残りの15種類は必要に応じて使えるようにひな型化されています。IT部門やコンサルティング会社に依存せず、ユーザーサイドで容易にクエリを作成できる点も、SAP BusinessObjectsのメリットといえます。

組織の成長とともに、SAPインサイドセールスのスタッフ1人あたりが管理する案件数は、年々増加しています。これらを当初と変わらぬ人員でカバーできているのは、「経験則のモデル化」などにより、BIが自然な形で現場のプロセスに組み込まれているからです。今後は、効果的なROIの観点も踏まえ、こうした取り組みをますます強化しながら、より革新的な営業モデルの構築にチャレンジしていきたいと考えています。

※ 本稿は、SAPジャパン発行の『SAP CERTIFICATION VOL.6』に掲載された特集『SAP BusinessObjectsがもたらす企業情報活用の革新 ~実践編~』を一部加筆のうえ転載したものです。