帝国データバンクは9月8日、2009年8月に倒産した全国企業に関する集計調査の結果を発表した。同発表によると、倒産件数は1,042件と、15ヵ月連続の前年同月比増加も今年最低を記録し、負債総額は2,753億4,400万円と、集計基準変更の2005年4月以降で最低となったという。

2008年8月の倒産件数と負債総額の推移 資料:帝国データバンク

同社は、倒産件数の傾向として、次の3点を挙げている。

  1. 食料品や衣料品などの販売不振が影響し、小売業が194件と前年同月比14.8%の増加となった
  2. 負債5,000万円未満の小規模倒産が457件発生、全体の43.9%を占める
  3. 借入金の返済負担など、中小・零細企業の資金繰りは依然厳しい状況が続く

また、負債総額は、前月比が19.1%、前年同月比が66.2%と大幅減少し、2007年2月の2,805億9,700万円を下回り、集計基準変更の2005年4月以降における最低記録を達成した。倒産1件当たりの平均負債額も2億6,400万円と、前月の2億8,300万円を下回り、最低を更新するなど、負債総額は縮小傾向が続いた。

負債総額における傾向としては、「中堅・大企業向け支援策の効果もあり、負債100億円以上の倒産が1年1ヵ月ぶりに3件しかなかった」、「負債額トップは、製造の泉精器製作所の168億3,300万円」の2点が挙げられている。

業種別では、7業種中、製造業(147件、前年同月比6.5%増)、卸売業(151件、同15.3%増)、小売業(194件、同14.8増)、サービス業(176件、同2.9%増)の4業種で前年同月比増加となった。特に、小売業は今年3番目の高水準となった。一方、建設業(284件、同7.5%減)、運輸・通信業(42件、同、25.0%減)の2業種は前月、前年同月をそれぞれ下回った。

主因別では、「不況型倒産」の合計が859件と、構成比82.4%で前月比1.8ポイント、前年同月比1.0ポイントの増加となった。これは2009年2月の81.7%を上回り、集計基準変更後で最高を記録した。要因として、「受注急減の余波が続いての「減産関連倒産」が15件発生し、2008年12月からの累計で168件に達したこと」、「緊急保証制度利用後の倒産が8件発生し、2008年11月からの累計で48件に達したこと」が挙げられている。

今後の見通しとして、8月の倒産企業の従業員数は7,619人と、大型倒産の減少から2008年1月以来1年7ヵ月ぶりに8,000人を下回っているが、個人消費の低迷が続くなか、雇用調整の動きは製造業から小売業、サービス業に広がりつつあり、今後も雇用環境は厳しさを増しそうだとされている。

また、7月の全国消費者物価指数が100.1と前年同月比2.2%低下して3ヵ月連続で過去最大の下落率を更新し、夏物衣料や日用品で値下げの動きが広がったほか、景気低迷による需要減が価格を押し下げた。こうした雇用悪化による消費不振、デフレ進行による競争激化はしばらく続く見込みであり、小売業、卸売業、サービス業といった内需型産業の倒産増加が一段と加速するおそれがあると、同社では分析している。

さらに当面は、新政権誕生による政策転換が倒産動向に与える影響が注目されるという。主な懸念材料に、「予算見直しに伴う公共事業の大幅縮小がもたらす建設・関連業界への影響」、「高速道路の無料化に伴う集客減が予想されるフェリー業界、荷主からの値下げ圧力の高まりや道路混雑のあおりが心配される陸運業界への影響」、「.製造業派遣の原則禁止などに伴う中小零細業者の淘汰が予想される人材派遣業界への影響」があるとして、いずれの業界も企業体力そのものが弱まっており、新たな政策により経営環境が厳しくなれば、一段の倒産増につながりかねないとという指摘がなされている。