三洋電機は5月14日、2008年度(2008年4月~2009年3月)の決算概要を発表した。売上高は前年同期比12.2%減の1兆770億円で、海外および国内の売り上げ比率は国内が6,708億円、海外が1兆999億円となった。また、営業利益は同89.1%減の82億7,600万円、純利益は前年度の287億円の黒字から932億2,600万円の赤字へと転落した。

2008年度の決算概況(単位は100万円)

この結果について、同社代表取締役社長の佐野精一郎氏は、「下期に深刻な販売不振に陥ったことで、営業利益は確保したが、純損益が予想よりも若干酷くなった」とする。

部門別の売り上げでは、コンシューマ部門は"洗濯機"が「AQUA」が好調で前年度比78億円増となったものの、"冷蔵庫"が同90億円減となったほか、"デジタルカメラ"や"ナビゲーションシステム"などほとんどの製品で第3四半期以降不振となり、同10.3%減の6,787億円となった。

また、コマーシャル部門は、"ショーケース"が中国を中心にアジア地域で堅調に推移し同65億円増となったほか、メディコム事業も電子カルテシステムが堅調に推移したことで同15億円増となったものの、大型エアコンが国内のほか、海外でも第4四半期に急減速し同112億円減となるなどの影響で同3.5%減の2,534億円となった。

コンポーネント部門は、リチウムイオン電池が11月後半から市場が悪化したものの、同83億円増を達成。太陽電池も景気減速の煽りを受けたが第3四半期まで好調を維持してきたことから同85億円増となった。しかし、半導体および電子部品、光ピックアップなどは、携帯電話やパソコン、テレビなどの電子機器市場の需要減退から半導体単体で同419億円減、電子部品も同197億円減となり、全体では同15.6%減の8,049億円となった。

各セグメント別の営業利益

2009年度の見通しとしては、「少なくとも上期は若干の回復感はあるものの、そのまま景気が上向くとは思えない。下期である程度の景気の上昇を期待する」(同)とし、売上高は同6.2%となる1兆6,600億円、営業利益は同201.2%増となる250億円、純利益が±0円を見込むとしている。

2009年度の業績予想

中期経営計画を見直し

また、この見通し実現に向け同社では2008年に策定した中期経営計画の見直しを発表。その理由として佐野氏は「第2四半期までは順調に売り上げを確保してきたが、第3四半期以降に業績が急速に悪化、第4四半期にいたっては前年度比70%超のマイナス成長となり、営業利益も赤字に転落した」ことを挙げ、この状況は2009年度上期も続くと考え、新たな施策の打ち出しと中期経営計画の見直しが必要と考えたとした。

具体的には、中期経営計画「チャレンジ1000」の達成を当初計画の3年目の2010年度から1年先送りになる2011年度へど延長するというもの。これにより、2010年度の売上高は1兆9,300万円、営業利益は700億円となり、当初目標の売上高2兆1,000億~2,000億円、営業利益900億円(チャレンジ目標1,000億円)が2011年度の目標となる。

中期経営計画を見直し最終目標を1年先送り

施策としては、2つの重点施策を提示。1つが「経営体質の徹底強化」で、事業のさらなる選択と集中ならびに付加価値商品へのリソースシフト、コストダウンの徹底を進めるとする。

具体的には「エレクトロニクス事業」の領域で、電子部品事業の2008年度の人員削減効果や拠点集約などに加え、2009年度は一般LED事業からの撤退(照明用LEDへのリソース注力)、グローバル生産体制の再編の継続を進めることで80億円の利益効果を狙う。また、半導体事業も人員整理や間接部門の合理化、パワーデバイスへのリソースシフトなど大規模な改革を2008年度に終了しており、240億円の利益効果を今年度見込むという。

加えて「エコロジー事業」の領域である"コマーシャル事業""白物家電事業"において、2008年度に行った拠点集約に加え2009年度に家庭用エアコンの低価格モデルの中国向けを除いた全地域向けの自社生産撤退と業務用空調への開発リソースシフト、ならびにすでに4月1日付けで実施したコールドチェーン事業の国内販売会社の統合効果により30億円の利益効果を見込むとしており、これにより、コストダウンや緊急収支改善施策などと組み合わせることで、250億円の営業利益を実現するとする。

2つ目は「成長戦略の再構築」で、各国政府などが打ち出す景気回復策の共通キーワードである「次世代自動車の普及」「再生可能エネルギー活用」「省エネ社会の構築」に対し、「これらの領域は三洋の強みであり、グローバルで戦える分野」(同)であり、「我々にとっては100年に1度の好機」(同)とし、投資の前倒しなどを実行していくという。

各国の政策に共通する項目は三洋の事業に直結しているという

具体的には、ハイブリッドカー向け2次電池の需要拡大に対応するために2009年/2010年度の2年間で300億円の投資を計画。ニッケル水素電池を2009年度はセル数ベースで前年度比約250%に拡大するほか、リチウムイオン電池を徳島事業所内で年内に本格的な量産を開始する。加えて、同社可西事業所内に新たにリチウムイオン電池生産用拠点の設立を計画。2009年年度内の量産開始を目指すとしており、建屋などに130億円の投資が行われる見込み。

新たなリチウムイオン電池の生産拠点を設立

また、太陽電池についても景気減退で市場が減速したものの、今後は徐々に回復、成長していくとの見方から、欧米中心の販売を目指し、同社のHIT太陽電池の各国の政策に対応した販売戦略の再構築、ならびに、競争力向上に向けた2010年度で600MWの達成およびオレゴンでのウェハ内製化の開始によるコストダウン効果(20%程度の内製化を見込むとのこと)、変換効率のさらなる向上(研究所レベルでは23%を達成)を目指すとしている。一方、新日本石油と合弁会社を設立した薄膜太陽電池についても上期中に量産投資を含む事業計画の決定を行い、当初の予定通り、2020年に2GWの生産能力確保を目指すとした。

このほか、業務用機器でも省エネソリューション事業の強化による総合提案力強化によるエンジニアサービスなどをまとめた1ストップサービスの提供などによる施設まるごとの省エネの実現による顧客の価値の向上を目指すとし、「太陽電池で発電し(創エネ)、それを2次電池で蓄える(蓄エネ)。そしてそれを節電効果の高い機器(省エネ)で使用するという次世代エナジーソリューションは三洋だからこそできる事業として提供していく」(同)とした。

次世代のエナジーソリューション事業の姿