米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊で運転士を含む25人の死者と多数の怪我人を出した9月12日(現地時間)の鉄道事故だが、その原因は通勤列車と衝突した貨物列車の運転士が携帯メールに気を取られ、赤信号の指示を見落としたことに起因するようだ。米国家運輸安全委員会(National Transportation Safety Board: NTSB)が10月1日に発表した事故調査報告でわかった。運転士が所持していた携帯電話の通信キャリアの記録によれば、事故が起こったとみられる時刻のわずか22秒前に同携帯からメールが送信されていたという。

同事件は9月12日の午後4時過ぎ、ロサンゼルス北方の近郊都市チャッツワースを走る通勤列車のMetrolinkと、大陸全域に鉄道網を持つUnion Pacific運行の貨物列車が衝突し、25名の死者と100名以上の怪我人を出したもの。米国の鉄道史では1993年以来の大事故になったとされている。現場は急カーブのある区間で、ちょうど中央部付近で両車両の衝突が起きた。事故直後の調査で通勤列車のスピード超過が確認されたほか、信号無視の可能性が指摘されていた。さらに3日後の15日には運転士の友人2人が事故直前、問題となった通勤列車の運転士と携帯メール(SMS)のやり取りを行っていたことが判明、これがケアレスミスにつながった可能性があると捜査が進められていた。

NTSBの今回の発表によれば、問題の運転士は事故日の12日に午前6時44分から同8時53分、そして午後3時3分から事故のあった時間帯までの2つの時間帯で列車の運行を担当していた。携帯キャリアの記録で、午前の運航中の時間帯には21件の受信メッセージ、24件の送信メッセージがあったことが確認されている。また午後の運航中の時間帯は受信メッセージが7件、送信メッセージが5件だった。運転士の携帯電話の最後の受信メッセージとなったのが午後4時21分3秒、一方で送信メッセージが午後4時22分1秒だった。もう一方の当事者であるUnion Pacific側の運行記録によれば、事故の発生は午後4時22分23秒であり、問題の運転士は事故発生直前の22秒前まで携帯電話を操作していたことになる。

運転中の"Texting"を禁止へ

こうした電車運転士やドライバーの携帯電話操作は日本でもたびたび問題にされているが、事件の起きたカリフォルニア州では今年7月より運転中の携帯通話を禁じる法律が施行されており、ハンズフリー状態以外での通話ができなくなっている。また9月には運転中の携帯メールを禁止する法律も通過しており、来年2009年以降は"テキスティング(Texting)"と呼ばれるSMSの送受信操作も行えなくなる見込みだ。前述のMetrolinkも事件でテキスティング行為が明らかになった際、「従業員の勤務中での携帯操作は全面禁止」であることを声明で出している。

携帯電話に対する規制を強化する一方で、運転士側のケアレスミスによる事故防止策も進められている。日本ではおなじみの列車停止装置であるATC(Automatic Train Stop)システムだが、今回の事故を契機に全通勤列車への取り付けを義務づける提案が進められている。従業員のモラルに訴えるだけでなく、システム面でも安全性を担保して多重化することで事故を未然に防ぐのが狙いだ。