国有企業には各種規制の壁

中国におけるアニメの歴史は、非常に古くまでさかのぼることができる。しかし、産業としては非常に新しい。1926年、万氏三兄弟が中国初の国産アニメーションを創作。それをきっかけに、中国では多くのクリエーターが生まれ、多くの作品が生み出された。

上海美術映画製作所が創作し、中国の子どもを夢中にさせた「オタマジャクシがお母さんを探す」という水墨アニメーションから、孫悟空、神筆馬良、雪の子、黒猫警長、ヒョウタン兄弟など多くのアニメキャラクターに至る、スクリーン上の美しい映像が幾世代もの中国人の心の成長に影響を与えてきた。

しかし、それらが純粋な芸術作品として存在した時間がやや長すぎた。政治体制、政治思想、市場環境などの要素に制限され、中国の国産アニメーションは数十年来、一貫して「創作→放送→受賞」という流れを越えられないできた。

どんなに優れた作品でも、ビジネスの力を借りて飛翔することができなければ、たとえ作品に寄せる貴重な思い出がいくらあっても、やがては時間の砂に埋められ、最後は歴史の隅に身を隠さざるをえなくなってしまう。

「中国アニメ産業」という概念が提起されるや、嗅覚の鋭い民間資本が急先鋒となって、我先にと市場を占拠した。ほんの4年間で製作規模は急速に拡大、テレビ局傘下の少年児童チャンネルも次から次へと創設され、アニメ産業パークが至るところに建設されるようになった。

中国の文部科学省にあたる文化部の文化市場司動画アニメゲーム処長の劉強氏は、「国有企業と民間企業が効果的な提携をおこない、優位性をともに発揮して補い合うのが、中国アニメ産業振興への良い方法だろう」と語る。

確かに数十年来積み重ねてきた経験、資金、技術をみれば、中国美術映画製作所のような国有企業こそ業界をリードする企業になるための重要な要素を兼ね備えているように思われる。しかしこうした企業は、常に種々の規制に縛られており、どのように既存資源をブランド構築に向けて活用すべきか、しばしば答えを見出せずにいる。

一方、民間企業にも問題は山積している。規模があまりにも小さく、資金と人材がともに不足している。どのように中国の伝統文化を掘り下げ、オリジナルな内容を充実させるかという点についての経験が足りないのだ。

ネットなどにおけるコンテンツ提供が普及

中国が抱える13億人の人口のうち、少なくとも5億人はアニメ市場の潜在的消費者であろう。これは、国産アニメの将来の発展を保証する最大のアドバンテージだ。では、国産アニメは、どのようにして現在のパワー不足の状態を乗り越えることができるのだろうか。

過去数年、デジタル技術の革新の波に乗って、Flashアニメ、3Dアニメ、ホログラフィのアニメ、ネットゲームなどの新しい動画アニメの形が現れた。Flashアニメは、インターネット発展の助けを借りてあらわれた確かな例証だ。将来、携帯電話、PDA、ネットテレビなどの新メディアで流れるアニメ番組は、必ずや巨大な消費市場を醸成することだろう。

インターネットと無線技術のさらなる進歩、普及に伴い、昨年新たなアニメの形式が頭角をあらわした。ニューメディアのアニメーションだ。伝統的コンセプトにおけるアニメとは異なり、ニューメディアのアニメーションは、インターネットをプラットフォームとして、携帯ゲーム、ネットゲーム、Flash短編映画などのメディアにまたがったマルチプラットフォームを通じ、豊かなコンテンツを提供する。ニューメディアのアニメにおいては、従来のアニメ製作に比して投資額が少なく、コスト回収の周期がより短いのが特長だ。

中国が「文化創意産業」の代表、と位置づけるアニメ産業は、21世紀の成長産業と目されている。だが、諸外国に比してはるかに有利な政策的支援を受けながら、国内の産業全体がどこまで発展できるかどうかは未知のままだ。

国産アニメ産業を最後に引っ張るのは、個々人のクリエイティビティだ。政策の庇護と、扶助を受けて安穏としているだけでは、この先も外部要因に影響されて右往左往するというこれまでのパターンを避けられないだろう。