シトリックス・システムズ・ジャパン 代表取締役社長の大古俊輔氏

シトリックス・システムズ・ジャパンは9日、都内ホテルで「CITRIX Application Delivery Conference 2008」を開催し、新たな仮想化技術への取り組みをアピールした。このイベントは、同社のアプリケーション・デリバリー・ソリューションおよび、それらを裏から支える仮想化について紹介するイベントだ。今回はその中から、同社代表取締役社長の大古俊輔氏および、米シトリックス デリバリー システム部門担当 上級副社長兼ジェネラルマネージャーのゴードン・ペイン氏が参加したキーノートの様子をレポートしよう。

大古氏は冒頭で「インターネットの普及により、ここ数年でITがかなり変わってきた」と語った。そこで重要になるのが、企業はどのように事業のスピードアップを図るかだ。厳しい世界的競争の中でユーザーニーズを満たすには、ITも市場変化に応じて機敏に対応していく必要がある。つまり、変化への俊敏な対応こそが、ビジネス上の生き残りをかけた大きなパラメータとなっているのである。

大古氏が挙げた現在のITに求められる6種類の主なファクター

また、情報漏えいは企業にとって大きな損害となるため、セキュリティとコンプライアンスも重要。しかし逆説的に考えれば、情報のセキュアな管理は企業経営に柔軟性を与えることになるだろう。資源の9割以上を輸入に頼っている日本において、知識やノウハウなどを確保し、必要な人に安全かつスピーディーにデリバーしていくか、これはIT業界に関わる人間全員が抱えている問題だという。さらに、モビリティとテレワークに関しても、セキュアな環境がなければ実現することは不可能だろう。

大古氏は、近年流行りつつあるGreen ITについても「環境保護運動というとボランティアのように見えますが、今や非常に深刻な問題です」と言及した。エコロジーは草木を植えるなど環境にやさしいだけでなく、ビジネスが継続して成長していくための最良な手段だ。IT関係者がエコロジーに貢献できる具体的な例は電力消費量の削減だ。経済産業省では2025年までにインターネットを飛び交う情報量が200倍になり、IT関連の電力消費量は現在の5倍になると予測、この値は2025年における日本の電力消費量の2割に相当するという。このように電力消費量の大幅な増加が予想される現代では、Green IT環境の構築がビジネスの生産性や継続性、イノベーションに大きな役割を果たすのである。

さらに大古氏は「ビジネスにおいては、さまざまな価値観を持った人々がプロジェクトへ参加します。そういった際には一部の人のみがアクセスでき、その他の人には存在すら見せないような仕組みが必要になります」と語る。すべてを窓口経由のメインフレームに頼っていた1970年代は、ある意味で理想的なセキュリティプロセスが保たれていた。しかし、変化が激しくスピードが要求される現代においてこのような対応は不可能である。柔軟性や俊敏性、モバイルワーカーに対する対応など、現在求められているITは複数の矛盾する要素を束ねていく必要があるわけだ。加えて、消費電力やサーバ数の削減など、企業として取り組むべき課題も多々ある。このような厳しい状況下において、すべての問題を満たす解がシトリックスの提供するソリューションなのだという。

大古氏は「延長線上にいては見えないが、考え方を変えれば可能になる、つまり大きなパラダイムシフトが必要だと心から思っています。そこでシトリックスの考えるパラダイムシフトが"仮想化"なのです」と語る。

情報処理は、すべてをデータセンターで賄っていた頃と比べ、自分のデスク上で計算ができるようになり飛躍的に成長した。しかし、本当に自分のデスク上にPCがフィジカルに存在しなければいけないのか、それが企業や自分にとって効率的なのかをもう一度考え直そうというのだ。例えば、出張先でノートPCが壊れてすべてのデータが消えてしまったら大きな損失となるだろう。大古氏は「実際にアプリケーションやデータを使えれば、物理的に存在している必要はありません。一緒に考え方を変えましょう」と語った。