米Microsoftは5月3日(現地時間)、米Yahoo!に対して行っていた1株あたり31ドルでの買収提案を撤回すると発表した。Wall Street Journal紙を含む複数のメディアによれば、両社は直前まで友好的な買収成立のための交渉を続けていたという。最終的に両社の金額面での調整がつかず、Microsoft側が買収を断念したものと思われる。

米Microsoft CEOのSteve Ballmer氏は「(Yahoo!への)買収提案がMicrosoftならびに、Yahoo!、そして市場全体にとって意味のあるものだと引き続き考えている。Yahoo!との合併で目指すべきゴールとは、市場により素晴らしい選択と革命をもたらし、われわれの株主ならびに従業員に対して価値を創造することにあった」と本発表の中でコメントしている。また同時に50億ドル近い買収提案額の引き上げにも関わらず、Yahoo!側が歩み寄りを見せなかったことに対しての不満も寄せており、今回は提案を引き上げることが両社ならびに両株主にとって最良の選択だったと説明した。同社の買収撤回を発表したプレスリリースの中に、これらコメントならびにBallmer氏が米Yahoo!共同創業者兼CEOのJerry Yang氏に宛てた手紙の全文が掲載されている。

オンラインサービスならびにオンライン広告市場での生き残りをかけてMicrosoftがYahoo!に対して起こした1株あたり31ドルでの買収提案だが、「Yahoo!本来の価値を著しく損なうもの」としてYahoo!側では抵抗を続けており、Microsoftが近日中にも同社の敵対買収(TOB)をスタートするのではないかとみられていた。だがWall Street Journal(オンライン版)の5月3日(現地時間)付けの報道によれば、友好的な買収に向けて両社が最後の交渉に入っていたという。だがその一方でYahoo!はGoogleとの提携を模索しており、Googleのテキスト検索広告サービスであるAdSenseのYahoo!への導入を柱とした提携交渉を1週間内にも発表する計画があるとも報じられていた。Microsoftの買収撤回に向けてあらゆる方策を練っていたYahoo!では、Microsoftとの交渉を続ける一方で、その最大のライバルとの提携案を模索していたことになる。

今後の展開について、まずYahoo!が超えなければいけない壁は、同社株主との交渉だ。Microsoftが買収提案を撤回したことで、Yahoo!株価は週明けの月曜日(5日)に大暴落することが見込まれる。Microsoftによる買収を見込んでYahoo!株を購入した株主らにとって大きなダメージは避けられず、必然的にYahoo!経営陣らは株主らの猛攻撃に晒されることになる。Yahoo!側がMicrosoftによる買収提案なしで単独で株価を引き上げることは難しいとみられ、CEOのYang氏を含む役員らの解任動議が持ち出される可能性もあり、Yahoo!はよりいっそう厳しい立場へと追い込まれたことになる。一方で前述のBallmer氏のコメントにもあるように、MicrosoftはYahoo!買収を完全に諦めたわけではなく、Yahoo!のこうした混乱に乗じて再び買収提案を持ち出す可能性もある。いずれにせよ、買収成立の可否は抵抗を続けるYahoo!経営陣らの判断に委ねられており、比較的短期決戦となる公算が強い。