2007年は、BI(Business Intelligence)の世界市場が1つの転換点を迎えた年だったといわれるようになるかもしれない。Oracle、Microsoft、IBM、SAPといった、名立たるIT大手が短期間のうちに、こぞってBI専業の企業を買収したからだ。

そうした状況の下で、いまや、数少なくなった独立系のBI事業者として孤塁を守っているのが、米MicroStrategyだ。業界再編の大きな流れのなか、この1年のBI市場の動向についての見解とともに、同社が進むべき道はどこに向かうのか、同社のVice President, Corporate Development兼日本カントリーマネージャであるKyle Loudermilk氏を聞いた。

--世界のBI市場が激変していることをどう見ているか

Kyle Loudermilk氏

この6カ月ほどの間に、Hyperion、BusinessObjects、Cognosなど、当社と競合する企業は次々に、大手のベンダに買収された。これらの買収劇により、我々は、独立系のBI事業者としては最大規模になった。これはラッキーなことであり、良いポジションに立つことになったと感じている。独立系が少数になった状況のなか、我々は最高水準の技術をもっていると信じている。当社の製品は、巨大なデータを抱える、複雑化したシステムをもつ企業でのBIに適していると同時に、使いやすさに優れ、ユーザーフレンドリでもあり、両面の強みをもっている。

--買収されたBI専業ベンダはどうなるのか

大手により合併/買収された企業は、財政的には安定することとなり、その点では、良好だろうが、規模が大きくなると、身動きがしづらくなり、自由が利かなくなるのではないか。さまざまな技術、あるいは組織を統合しなければならないという問題も浮上してくる。買収されたBI事業者にいる、積極性の強い人々のもっているスピリットも薄められるのではないかとみている。異なる企業文化を融合させるのは簡単なことではないし、複数の企業が統合されることにより、重複するような技術/製品をどうするのか、また、将来の方向性や意思決定はどうなるのかといったことも懸念される。大手に吸収されれば、いずれは(買収した側の企業の)「色」に染まることになるだろう。

--いまのBI業界の状態は、MicroStrategyにはどのような影響を及ぼすのか

企業が異なる企業に統合されるには時間がかかる。1年くらいを要することもある。その間、買収された方の企業では、実はビジネスは有効には動かなくなる。買収により、さまざまな問題が出てくる。たとえば、CognosはIBMの傘下に入ったわけだが、CognosのこれまでのパートナーはIBMと競合関係にある、というような例もあって、パートナーとの既存の関係が維持できるのかどうかなど、難しい状況も考えられる。当社では、BIのリーダー企業として、パートナーに対しては、純粋にオープンな立場でいられる。自動的に競合相手が消えていったいま、我々にとっては良いチャンスだと感じている。

--BI市場全体の潮流はどうなるのか

当社は、エンタープライズ向け製品には特に注力しているわけだが、今後、エンタープライズ向けの需要がさらに大きくなる。一方、これまでの、一連のBI専業ベンダ買収の実態をみていると、エンタープライズ向け事業を手がけている大手のIT企業が、デスクトップ向けBIの企業を買っているようであり、いずれ、これら大手企業の立つ位置とのミスマッチがおきてくるのではないかと思う。これら各社は、市場の方向性がよく見えていないのかもしれない。