Oracle AIA開発担当バイスプレジデント パコ・オーブルホアン氏

Oracle OpenWorld 2007の期間中、毎日必ず話題に上ったキーワードが「Application Integration Architecture(AIA)」だ。Oracleが買収戦略によって獲得した多くのポートフォリオをシームレスに統合することを提案するソリューションだが、興味深いのはOracle製品だけでなく、SAPやSalesforceといった競合他社製品の統合まで視野に入れられていることだ。では、従来から使われているEAIやSOAといった技術とAIAは、何が根本的に違うのだろうか。

OracleのAIA開発担当バイスプレジデント パコ・オーブルホアン氏は、AIAについて「プラクティカルなSOA」と表現した。ならばSOAのままでいいのでは? と考えたくなるところだが、顧客の中にはSOAという用語が使われることを嫌う向きも多いという。「(SOAは)ビジョンは良いのだが、現実にはユーザ自身がやらなければならない作業が非常に多いため、あまり普及していないのが現状」と同氏は指摘する。SOAは本来、明確なポリシーの下で運用されてこそその威力を発揮できるのだが、実際にはそうしたSAOガバナンスが徹底している企業はそれほど多くない。結果、ユーザは「手間と時間がかかる」SOAを避けるようになり、ヘテロジニアスな環境は改善されないままとなる。

ITの世界では、新しい用語や概念が登場するとつい、それが一夜にして世界を変えるような錯覚をユーザもベンダも抱きがちになる。だからそれがマジックワンド(魔法の杖)ではないとわかったとき、最初の期待が大きければ大きいほど、その反動で失望も大きくなる。いってみればSOAは今、「失望の初期段階」にあるのかもしれない。

だが、さまざまな製品やサービスが乱立する現在、SOAのもつ「緩やかな疎結合」という特性は捨てがたい魅力をもっている。加えてOracleは今後、獲得した製品群をOracleの名の下に展開していかなければならない。オーブルホアン氏は「Oracle自身も顧客と同じで、ヘテロな環境に置かれている」と言うが、自社のアプリケーションどうしが連携できないという事態はなんとしても避ける必要がある。

オーブルホアン氏は「スタンダードと現実の間にはつねにギャップが存在する。そのギャップを急に埋めようとするのではなく、徐々に解決していけばいい」とする。Oracleが描く"Enterprise SOA"、すなわちすべての製品/サービスがSOAでシームレスに統合された環境は今すぐには実現できないが、その前段階として今すぐ使えるSOAシステム - オーブルホアン氏が言うところの"Practical SOA"がAIAというわけだ。