Googleは5日(米国時間)、モバイルデバイス向けのオープンソースプラットフォーム「Android」を発表した。同時に34社で創設される連合組織「Open Handset Alliance」も発表。数週間前からGoogle PhoneやGphoneとして噂されていた同社のモバイルデバイスへの取り組みは、見方によってはもっと野心的で世界のデバイス事情を覆しかねないインパクトをもったものになった。将来の携帯電話や組み込みデバイスは、このGoogle OSともいうべきプラットフォームをデファクトスタンダードにしていく可能性がでてきた。

Google OSの登場はPCからではなく携帯電話から

AndroidとOpen Handset Allianceについて説明するAndy Rubin氏 - ビデオ会議での登場

今回の発表の要点は2つある。まず、(1)オープンソースソフトウェアをベースとしてモバイルデバイス向けに構築されたオープンプラットフォームを提供していくこと、それに(2)同取り組みを推進するために連合組織を創設したことだ。オープンプラットフォームの名称は「Android」、連合組織の名称は「Open Handset Alliance」である。

Google PhoneやGphoneの噂にあったように、当初の取り組みの中心は携帯電話だ。モバイルデバイスとして高い性能を実現していること、すでにきわめて大きな市場を形成していること、ネットワークへの接続が容易なデバイスであることなどがその主たる理由だ。

まったく同じとはいかないが、関連組織が連合してプラットフォームを展開していこうとする取り組みはいままでも携帯電話関連企業間で独自に進められていた。今回の発表のインパクトは、(1)その取り組みの主軸にGoogleがいること、(2)プラットフォームをOSSで展開すること、(3)連合組織がきわめて大きいこと、の3つに集約できる。

モジュラー型のOSSプラットフォーム「Android」

Androidの技術的な詳細は一週間後の12日(米国時間)にSDKとともに公開される見通し。WindowsやLinuxで使えるクロスプラットフォーム開発環境として提供されるのではないかとみられている。ここでは現在明らかになっている情報をまとめておきたい。

AndroidはLinuxカーネルをベースとして構築されるディストリビューションということになるようだ。(1)Linuxカーネル、(2)半導体メーカから提供されるデバイスドライバ、(3)Googleが開発するミドルウェア・UIコンポーネント・主軸アプリケーション、の3つが基本となる。端末ベンダやキャリア、ソフトウェアベンダがさらに自社のプロダクトを追加してそれぞれ活用するわけだ。

Googleが開発する部分のライセンスにはApache License Version 2.0が採用される。LinuxカーネルはGPLv2だ。このため、カーネルやデバイスドライバ以外は取り込んでクローズドにすることもできてしまうわけだが、Googleはその点はほとんど心配していないようだ。オープンプラットフォームであることに価値があるからだ。

Androidのアーキテクチャはモジュラー型と発表されている。モジュール構造にすることで、ハイエンドなデバイスからローエンドなデバイスまで幅広く対応する。同OSを搭載した携帯デバイスは2008年に発表されるとみられる。以降はナビゲーションシステムや家電などにも展開していくようだ。夢物語のように聞こえるが、Googleが中心にいるだけに笑って済ませられない凄みがある。

34社の連合組織Open Handset Alliance、ドコモとKDDIも参加

同取り組みを推進するための連合組織はまず34社で創設された。主要な企業はGoogleをはじめT-Mobile、HTC、Qualcomm、Motorolaだ。日本からはNTT DoCoMoとKDDIが参加している。ほかにもBroadcom、eBay、Intel、LG、Nvidia、Samsung、Wind Riverなど錚々たる面々が参加している。同発表を受けてかNTT DoCoMoとKDDIの株価は上昇している。

同組織は(1)半導体メーカ、(2)モバイル端末ベンダ、(3)モバイル通信ベンダ、(4)ソフトウェアベンダ、(5)コマーシャライゼーションベンダの5つのカテゴリに分類されている。ハードウェアデバイスドライバの開発からソフトウェア開発、サービス提供、サポートサービスの提供まで幅広く網羅した形だ。

すでに携帯電話で成功を納めているNokiaやApple、組み込みOSの展開を進めているMicrosoftは同組織には加盟していない。それ以外のメーカやキャリア、ソフトウェアベンダの参加もない。今後参加する企業は増えると考えられるが、同連合に参加するかどうかで自社戦略の大きな転換を迫られることになりそうだ。