去る10月1日、米Adobe Systemsがモバイル機器向けのFlash Playerの新版である「Adobe Flash Lite 3」をリリースしたことは記憶に新しい。Flash Player 8をベースとして開発された同製品は、モバイル分野に新たなリッチ・コンテンツの波を呼び込むものとして期待されている。11月1日より2日間にわたって開催される「Adobe MAX Japan 2007」では、同製品も含めたAdobeの新技術に関する最新情報が発信される予定だ。

米Adobe Systems モバイル&デバイスビジネスユニット グローバルエバンジェリストのBill Perry氏

さて、それに先立って31日、アドビシステムズはFlash Lite 3の特徴や魅力、Flash技術の可能性、そしてモバイル端末市場に対する今後の同社の戦略などを紹介するプレス向け説明会を行った。同社でモバイル&デバイスビジネスユニット グローバルエバンジェリストを務めるBill Perry氏は、まずNTTドコモの携帯電話端末によるFlashコンテンツの利用状況を紹介し、2006年にはウェブ閲覧とコンテンツダウンロードで18億ドルを超える収入を得ていると指摘、リッチ・コンテンツのモバイル市場は急速に拡大していると語った。

日本におけるNTTドコモの影響を受け、海外でもモバイル端末でFlashを採用するケースが増えてきているという。例えば米Verizon Networksはダウンロードサービス「Get-It-Now」でFlashを採用しており、中国でもChina MobileがFlash Liteのコンテンツダウンロードサービスをスタートした。

そのような状況の中でリリースされたFlash Lite 3には、最大の特徴としてFlash Videoを再生できる機能が備わっている。Perry氏は「現在Web上で視聴できるビデオ映像の70%以上がFlash Video」だと指摘する。Flash Lite 3によってそれらの動画が携帯電話端末などで見られるようになれば、そのインパクトは極めて大きい。

モバイル端末におけるFlashのもう一つの特徴的な機能として、Perry氏は「Flash Cast」を挙げた。これはモバイル端末にFlashコンテンツをプッシュ配信するサービス。日本ではNTTドコモが「iチャネルサービス」としていち早くこれを導入しており、2007年3月の時点で1000万人の加入者がいるという。待ち受け画面をリッチにするものとしては、その他にデバイスのホームをリッチ・コンテンツを使ってカスタマイズできる「Flash Home」などもある。

インターネットの世界がフラットなHTMLからFlashやFlexを用いたRIAベースに進化してきたように、モバイルの世界も新しい技術によって今後はよりリッチなものへと進化していくだろうとPerry氏は指摘する。そこで生まれる新たなモバイルカテゴリーにおいて、よりリッチで魅力的なモバイル体験を提供していくことが重要だ。

そこで問題となるのが、モバイル機器向けのコンテンツをいかに素早く低コストで作成できるかという点である。モバイル機器を対象とした場合、そこには多種多様な機器が存在する上、短いライフサイクルで新しい製品を次々と投入していかなければならないという難しさがある。各製品の仕様を理解してそれぞれに対して最適化した上で、検証にも大きなコストをかけなければならないのが現状だ。

モバイル機器向けコンテンツの開発者が抱える悩み

そこでAdobeでは、Flash Lite 3によるモバイルコンテンツの開発をサポートするオーサリングツール「Adobe Device Central CS3」を提供している。同製品は、Flash CS3 ProfessionalやAdobe Creative Suite各製品と連携して、製作したコンテンツがモバイル機器上で正しく動作することを検証できるツールである。これによってシームレスなワークフローでモバイルコンテンツの設計・開発を行うことができるという。同製品は現時点で200機種以上の携帯端末をサポートしており、デバイスプロファイルのアップデートによって新たに登場するFlash Lite端末にも対応していくとのことだ。

Adobe Device Central CS3

発表の後半では、アドビシステムズ プロダクト&セールスエンジニアリング部 岡田学氏により、Flash Lite 3を用いたモバイルコンテンツのデモンストレーションが行われた。Flash Lite 3の主な特徴をリストアップすると、次のようなものが挙げられる。

  • 高性能なグラフィック描画
  • デスクトップ用Flash Player(Flash Player 8およびAction Acript 2.0)との互換性
  • SWFにも対応したWebコンテンツのブラウジング
  • Flash MMIサポート
  • パーシスタントによる情報の保存
  • 豊富なAudio Codecs(MP3, PCM, On-Device codecs)
  • 豊富なVideo Codecs(インラインビデオ、On2 VP6、Sorenson Spark)
  • WebサービスへのXMLソケット接続やXML解析ライブラリによるデータの読み込み
  • Flash Media Server接続のサポート
  • 透過サポート
  • 小さなフットプリント

特にFlash Playerによる動画再生については、単にFLVファイルが再生できるというだけでなく、FLVをダウンロードして保存しつつ同時に再生するプログレッシブ再生や、Flash Media Serverに接続してのストリーミング再生などにも対応している点が興味深い。後者では、サーバを介した双方向ストリーミングにも対応しているという。

アドビシステムズ プロダクト&セールスエンジニアリング部 岡田学氏

Flash Lite 3による携帯電話端末用ゲーム

リバーシのネットワーク対戦

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