市町村級テレビ局に商機を見出す

激しい市場競争を前に、これらの中小企業は、往々にして大手企業が手を染めたがらない仕事をやらざるを得ない。例えば、いま多くの中小企業は中国の県級テレビ局に目を向け始めている。中国でいう「県」は日本でいう「市」にあたるが、北京市や上海市のような中央直轄市とは違う。日本で考えれば、「町」のような規模である。

中小企業が、県級テレビ局に注目し始めた理由は簡単だ。国家からの受注を得やすい大手企業と、国家級のプロジェクトの受注をめぐって争っても仕方がないからである。新製品開発においても、大手企業は資金が豊富なだけでなく、税制優遇を受けられ、投資リスクを最小限に抑えることができる。中小企業の場合は、新製品の開発に失敗すればそれまで、といった場合も多い。大規模プロジェクトに一発勝負で命運を賭けるのもいいが、県級テレビ局を相手に、小回りのきく商売をおこなう必要があるわけである。

このように、中国のテレビ業界でIT技術ソリューションを提供する中小企業には幾多の難題がある。しかしいろいろ問題があるとしても、中国におけるテレビのデジタル化の進展が、彼らに新たな成長空間を提供してくれそうだ。

中国のテレビメディア行政を統括する国家広播電影電視総局は、2005年までに中国の1/4のテレビ局がデジタルテレビ信号電波の送信を可能とし、2010年までに全土でデジタルラジオ、デジタルテレビ放送を実現するとしている。この計画によれば、2015年までに中国はアナログラジオ、アナログテレビ放送を停止することになる。

双方向テレビ放送や地デジ放送標準規格など大きな動き

すでに大きな動きが始まっている。まず、2001年の「第九回全国運動会(日本の国体に相当)」において、テレビ放送で利用される電波を使用したデータ送信機能と、受像機に内蔵された情報入力・通信機能を使って視聴者がテレビ放送に対して働きかけを行うことができる、いわゆる「双方向テレビ中継」が行われたのをきっかけに、2002年10月には上海で双方向テレビ放送サービスが始まった。2008年の北京オリンピックは「ハイテク五輪」「デジタル五輪」がうたい文句だが、同オリンピックではデジタルハイビジョン方式での全世界向け中継が行われる予定だ。

放送規格の面でも、中国国家標準管理委員会が音頭をとり、同委員会が知的財産権をもつ「中国デジタルテレビ地上放送伝輸システム標準」が、2006年8月18日に国家標準規格として批准され、2007年8月1日から正式に運用されている。

同規格は、走査線数を増やした「高精細度テレビジョン(High Definition Television)放送」、現行の「標準テレビビジョン(Standard Definition Television)放送」、「マルチメディア・データ放送」など、多種の放送方式をサポートし、広範なニーズに対応するものとされる。

地上デジタルテレビ放送は、中国でも当面の重点分野である。衛星デジタルテレビ放送と有線デジタルテレビ放送システム、その補助システムが視聴者にデジタルテレビ信号を提供することになる。

デジタル化の大きなうねりは、有線ネットワーク事業やテレビ業界にとっての巨大なビジネスチャンスとなるだろう。従来のアナログテレビはまもなく淘汰されていく運命にある。中国全土のテレビ製品の新旧交替が、テレビ関連企業に億単位の発注をもたらし、テレビ産業チェーンの中で生きるIT技術サプライヤーにとっても未曾有のチャンスが到来する。中国におけるテレビメディア業界、そしてIT技術サプライヤーにとっての正念場が、いよいよ始まるのである。