Skyモードの搭載で「Google Earth」がにわかに活気づいている。日本語版バージョン4.0以降、衛星写真閲覧ソフトとして人気を博し、今度は天文写真閲覧ソフトとしてブレイク。しかし、ちょっと待ってほしい。Google Earthは単なる閲覧ソフトではない。画像や位置情報、3Dモデルなど様々な情報を追加表示できる、情報オーサリングという側面があるのだ。GPSレシーバーとデジタルカメラを用意して、Google Earthの深淵――情報オーサリングに挑戦してみよう。


GPSレシーバ「GPS-CS1K」を応用的に使う

今回の目標は、ドライブルートとその先々で撮影した写真を、Google Earth上に再現すること。サイクリングルートと写真、登山ルートと写真、海外旅行やアキバ徘徊などなど、要はGoogle Earthを利用し、どう歩き、どこで写真を撮ったのかが一目瞭然の移動ルート付きフォトアルバムを作ろうという試みだ。これなら行動軌跡を視覚的にとらえることができ、そうした情報の公開も可能になる。

ソニー「GPS-CS1K」(標準価格15,540円)。電源を入れて持ち歩くだけで、一定間隔で内蔵メモリに位置と時刻の情報を記録する

必要なアイテムはGPSレシーバとデジタルカメラ。今回は、NMEA-0183(GPS受信機とナビゲーション機器の通信規格)準拠のオーソドックスなGPSレシーバ「GPS-CS1K」を用いた。本来この製品はソニー製デジタルカメラと組み合わせて使うものだが、デジタルカメラはソニー製以外でも利用できる(筆者はキヤノンの「EOS 20D」を用意※)。まずはGPS-CS1Kをバッグにブラ下げて歩き、行く先々で手持ちのデジタルカメラで写真を撮ろう。帰宅したら、トラッキングログ(GPSデータ)と写真データをパソコンに転送し、いよいよ移動ルート付きフォトアルバム作成に着手だ。


フリーソフトでGPSログと写真をマッチング

これからすべき処理は、GPS-CS1Kで記録したトラッキングログと写真のタイムスタンプによるマッチング、さらにGoogle Earth用ファイル(KML/KMZファイル)への変換だ。GPS-CS1Kには、写真の撮影地点を表示するためのデータマッチング用ソフトと地図ソフトが付属しているが、KML/KMZファイルを出力する機能はない。同ファイルの出力手段はいくつかあるものの、いずれも手間がかかるため、今回はフリーソフトの「SONY GPS-CS1K to Google Earth & Maps converter」を利用する。

本ソフトは、トラッキングログと写真を読み込むだけで、自動的にGoogle Earth用のKML/KMZファイルに変換してくれる。さらにGoogle Maps用HTMLファイルの生成も可能。複数に分かれたトラッキングログを結合する機能を備え、たとえば二泊三日の旅行をひとつのファイルにまとめるといったこともできる。GPSレシーバーを持っているならぜひ試してほしいソフトだ。作成されたKML/KMZファイルをダブルクリックするとGoogle Earthが起動し、衛星写真上に移動ルート(パス)と写真付きプレイスマーク(目印)があらわれる。情報オーサリングツールとしてのGoogle Earthでは、KML言語を記述できれば、このような処理を自在に実行できるわけだが、一般ユーザーには敷居の高い話だろう。本ソフトのありがたみがわかるというものだ。

「GPS-CS1K」で録ったログデータと写真を登録して、<変換!>ボタンをクリック。これだけでGoogle Earth/Maps用ファイルを生成してくれる

生成したファイルをGoogle Earthに読み込んでみた。プレイスマークをクリックすると写真がポップアップする。写真は任意のサイズに調整可能。写真はローカル上のデータを参照するか、KML/KMZファイル自体に埋め込むことができる(当然ファイルサイズは大きくなる)

Google Maps用HTMLファイルを表示したところ。再生機能があり、アニメーションによって軌跡を表現してくれる。いつどこにいたかがひと目でわかる


Google Mapsをオーバーレイ表示する

さて、いとも簡単にルート付きフォトアルバムが完成したが、ひとつ困ったことがある。それは衛星写真の解像度の問題だ。都心は高解像度な写真が見られるが、地方都市や山間部はあきらかに解像度不足。クローズアップするとどこを表示しているのか判別できない。そこで入手しておきたいのが「Google Maps Overlay」という追加ファイル(ネットワークリンク)だ。このmapover.kmzをGoogle Earthに読み込むと、衛星写真上にGoogle Mapsをオーバーレイ表示できるようになる。これで解像度不足の僻地でも、地名や道路が読み取れるというわけだ。フォトアルバムにとどまらず、行動履歴の管理といった実用的な可能性も見えてくる。情報オーサリングツールの面目躍如といったところか。

低解像度エリアではクローズアップすると場所の特定が難しい。これではせっかくトラッキングログを表示しても意味がない

Google Mapsをオーバーレイ表示すると、低解像度エリアでも地名や道路の様子がわかる。オーバーレイの濃淡は場所パネルのスライドバーで調整可能


GPSカメラという選択肢

研究用途やビジネスなど、デイリーベースで行動履歴を録りたい人もいるだろう。少しでもKMLファイルを作る手間を省きたいなら、ランサーテクノロジーのGPSカメラ「LGX652」を利用するという選択肢もある。同社のGPSレシーバ「LGX2」を有線接続して使用するもので、メモリーカード内にある「MAPPHOTO.EXE」を実行するだけで、Google Earth用のKMLファイルとGoogle Maps用のHTMLファイルを作成してくれる。本格的に行動記録を録りたい人向けの製品といえそうだ。

GPSカメラ「LGX652」(ランサーテクノロジー)。「LGX2」とのセットで実売価格は7万円前後。購入する際は同社へ問い合わせのうえ、納品には1カ月ほどかかるとのこと

GPSモードが用意されており、「LGX2」を接続すると位置情報などが表示される

メモリーカード内にある「MAPPHOTO.EXE」をダブルクリックするだけでKMLファイルを作成できる

「MAPPHOTO.EXE」で作成したKMLファイルを開いてみた。プレイスマークひとつひとつに写真データが埋め込まれている。写真は自動的にリサイズされるので手間いらずだ

最新バージョンのGoogle Earth4.2 betaはKML2.2を実装し、プレイスマークにFlashや動画を埋め込めるようになった。また超高解像度写真を表示するための専用インタフェースも搭載している。情報閲覧ツールとして定着したGoogle Earthだが、情報オーサリングという側面に着目することで、より深く遊べるようになるだろう。

※他社製デジタルカメラとの組み合わせはメーカー保証外となります。

SONY GPS-CS1K to Google Earth & Maps converter

作者:T.Onishi(たかゆき) & M.Ikeda
種別:フリーウェア
配布先:http://www3.plala.or.jp/takayuki/gps/