前回は、第1回国際ドローン展の概要を説明するとともに、ホビー用ドローン(無人航空機)の主な展示を紹介した。今回からは、業務用ドローンの主な展示を国内開発のマルチコプター(マルチローターヘリコプター)に絞ってご報告する。
これまで業務用マルチコプターの市場では、外国企業が開発した機体が主流だった。しかし最近では、日本企業が開発した機体が相次いで採用されつつあり、勢いは日本企業にあると言える。第1回国際ドローン展でも、日本製のマルチコプターが数多く出展されていた。
純国産の自律制御型マルチコプターを開発
その日本勢を代表する開発組織が、産官学コンソーシアムの「ミニサーベイヤーコンソーシアム」である。自律制御システムの研究開発を主導してきた千葉大学の野波健蔵教授を会長とする。2012年10月16日に発足した同コンソーシアムは、2014年10月時点で会員数が103社に達した。また2013年11月1日には、同コンソーシアムの開発成果を製品化するベンチャー企業「株式会社自律制御システム研究所」が千葉大学キャンパス内に設立された。野波教授は同研究所の代表取締役をつとめている。
その自律制御システム研究所は、最初の量産モデル「MS-06LA」や農薬散布用機体「MS-06LL」、有線給電型機体「MS-04EX」、「インフラ点検型機体」、「原発調査用機体」、「高速遠距離飛行型機体」などを第1回国際ドローン展に出展していた。
最初の量産モデル「MS-06LA」は、同社が「標準機体」と呼ぶ汎用の自律制御型マルチコプターである。6個のプロペラを搭載した。機体の大きさと重さは直径101cm(プロペラの先端間直径)、高さ36cm、重量3kg。最大で6kgの貨物(空中撮影用カメラなど)を搭載できる。
農薬散布用機体「MS-06LL」は、最大で5リットルの農薬を搭載可能である。機体の全長は150cm、全高は40cm、重量は5kg。6個のプロペラを備える。バッテリはリチウムポリマ二次電池で、容量は12000mAh~18000mAhである。飛行時間は10分~30分。貨物の積載重量は最大10kg、推奨5kgである。プロペラを回転させるモーターは出力容量が500WのブラシレスDCモーター。ESC(Electronic Speed Controller)の最大電流は100Aである。
有線給電で飛行時間の制限をなくしたマルチコプター
有線給電型機体「MS-04EX」は、有線ケーブルを介して電力を供給することで、長時間の飛行を可能にしたマルチコプターである。原理的には、飛行時間の制限がない。給電が途絶したときに備え、非常用バッテリを載せている。非常用バッテリはリチウムポリマ二次電池で、容量は3000mAhである。機体は4個のプロペラを備える。機体の重量は2.8kg。貨物の積載重量は最大5kg、推奨3kgである。
「インフラ点検型機体」は、プロペラをアームの先端ではなく、中間に配置することでプロペラを保護した機体である。6個のプロペラを備える。機体は全長が約105cm、全高が約50cm、重量が約3kg。バッテリはリチウムポリマ二次電池で、容量は12000mAhである。飛行時間は10分~30分。貨物の積載重量は最大6kg、推奨3kgである。
原子力発電所の建屋内部を調査
「原発調査用機体」は、量産モデル「MS-06LA」をベースに開発したもの。原子力発電所建屋内部の調査用である。水平方向を走査するレーザースキャナと垂直方向を走査するレーザースキャナを搭載しており、3次元地図を作成するとともに障害物を認識する。また前方カメラ、上方カメラ、下方カメラと合計3台のカメラを搭載する。3個のカメラが撮影した映像をリアルタイムで取得することによって調査と操縦の両方に役立てる。またバッテリの自動交換機能を備えることで、長時間の飛行を可能にした。
「高速遠距離飛行型機体」は、ヘリコプターと同様に垂直の離着陸が可能で、飛行機のように高速で遠距離を航行することを目的としたコンセプト・モデルである。機体の外観は三角翼を備えた飛行機と似ている。三角翼に垂直離着陸用のプロペラを埋め込み、本体の後尾に相当する部分に推進用のプロペラを配置した。機体の寸法は全長が240cm、全幅が300cmとかなり大きい。機体の材質はカーボンで、軽量化を図っている。機体の総重量は8kg。目標とする飛行速度は時速150km、飛行距離は100kmである。
すでに100台の量産型マルチコプターを製造
なお、「ミニサーベイヤーコンソーシアム」が開発した最初の量産モデル「MS-06LA」は、株式会社菊池製作所の南相馬工場が製造している。製造した機体の数は、2015年5月時点で100台を超えたという。
(続く)