電車の顔は鉄道会社の個性が表れる。でも、保安部品は法令で定められており、前照灯(ヘッドライト)や後尾灯(テールランプ)は必ず設置する決まりだ。ところで、鉄道会社によっては、これらとは別に小さなランプを備えた電車がある。このランプの役割を知っておくと便利かもしれない。ただし、法令で義務づけられていないため、採用していない会社もある。いったいどんなランプで、何の役目をしているだろうか。
たとえば京急電鉄の場合、1500形は屋根に近く、行き先表示装置の両側だ。新1000形は運転台の下、後尾灯の隣にある。他の鉄道会社も車両形式によって異なるし、設置していない会社もある。また、独立したランプではなく、後尾灯と切り替えて兼用している場合がある。先頭で通過を表すときは白で点灯し、最後尾では赤で点灯する。
このランプはどんな意味だろう。
クルマの場合、ヘッドライトとテールランプの他にはフォグランプやターンランプがある。コーナリングライトやデイライトなどもある。
しかし電車の場合、進路は決まっているからターンランプやコーナリングライトではない。運転台の上や下にあるからフォグランプでもない。最近のクルマに増えたデイライトの先駆けかと思えば、消灯して走っている場合もある。
この小さなランプは「通過標識灯」または「急行灯」などと呼ばれている。駅を通過する列車を示すランプだ。おもに駅を通過する列車が使う。各駅停車では点灯しない。同じ形式の電車が各駅停車、快速、急行などで使われる場合に、このランプの役割を知っていれば、ひと目で各駅停車か通過列車か、わかるようになっている。
近畿日本鉄道の場合は無点灯、両側点灯、左点灯、右点灯と使い分けている。無点灯は普通列車。両側点灯は最も通過駅が多い快速急行や回送、団体列車など。右点灯は急行、左点灯は準急だ。南海電鉄では普通と各停を識別するために使われている。
法令で定められた灯火ではないため、各社によって使用規則が異なる。ただし、すべての大手私鉄で採用しているわけではなく、採用していた会社でも、近年は取りやめる場合もある。急行運転しない路線向けの車両では搭載しないという事例もあるし、急行運転に使用するため、あとから取り付ける事例もある。JRグループはほとんど採用していない。