北海道新幹線が開業し、並行在来線だった江差線が道南いさりび鉄道として新たなスタートを切った。地域情報発信列車「ながまれ号」は好評で、5月から運行開始する観光列車「ながまれ海峡号」の予約も順調だ。

その道南いさりび鉄道にはもうひとつ、ロマンチックなエピソードがある。なんと、路線の形が「北斗七星」そっくりだという。

いくらなんでも、それはできすぎ、言いすぎではないか。道南いさりび鉄道は五稜郭駅から渡島当別駅まで北斗市にあり、次の釜谷駅から木古内駅までは上磯郡木古内町にある。北斗市を通るからって北斗七星に似ているなんて、まさか……!

では、確認してみよう。地図を元に道南いさりび鉄道の路線を描いてみた。

道南いさりび鉄道の駅と路線

同様に、北斗七星の写真を元に北斗七星を描いてみた。

北斗七星の図

北斗七星は別名おおぐま座。ひしゃくにも例えられる。なるほど、どちらもひしゃくの頭と柄があるように見える。それでは、北斗七星を道南いさりび鉄道に重ねてみよう。

重ねてみた

惜しい。頭の向きが逆だった。残念ながら、道南いさりび鉄道の線路が北斗七星を描くという話はガセネタ。当連載で初の「ガセビア」か……。でも、なんだか悔しいから、北斗七星を裏返してみようか。

北斗七星を裏返す

おお、なんとなく一致したような気がする。と、いうことは、このトリビア、正しくは「道南いさりび鉄道の各駅を結ぶと裏返した北斗七星になる」が正解だ。いや、裏返したではロマンチックといえない。鏡に映ったとしようか。いや、海がいいな。「道南いさりび鉄道の各駅を結ぶと海に映った北斗七星になる」。

うーん……そうだ。こうしよう。北斗七星を地上に降ろせば良いのだ。これなら見上げたときとは逆向きになる。「道南いさりび鉄道の各駅を結ぶと、地上に降りた北斗七星になる」。もうひとつひねって、「道南いさりび鉄道は、地上に降りた北斗七星である」。うーん。いいねぇ。カッコいい。ついに「鉄道トリビア」は新たな伝説を作ったぞ。

一体誰が言い出したんだろう?

ところで、そもそも「道南いさりび鉄道の各駅を結ぶと北斗七星になる」は誰が言い出したのか? じつはこれ、北斗市に寝台特急「北斗星」の客車を保存しようという「北斗の星に願いをプロジェクト推進委員会」のプレゼンテーション資料にあった。

「北斗星」設置の効果

この中の6番目の項目に「道南いさりび鉄道沿線各駅を結ぶと北斗七星に」と書かれている。そこにある「別紙-1」がこれ。

「別紙-1」

きれいに北斗七星が描かれていた。これだけを見たら納得だ。実際の北斗七星の向きって、意外と覚えていないなと苦笑いした。それにしても、道南いさりび鉄道と北斗七星を結びつけたアイデアはすごい。逆向きは惜しいけどすごい。夢が膨らむ。発案者はロマンチストだ。

ところで、赤い丸で示された茂辺地駅は、「北斗星」の寝台車を保存する予定地「旧茂辺地中学校跡地」の最寄り駅である。「北斗の星に願いをプロジェクト」は実行に移された。クラウドファウンディングサイト「READYFOR」で、車両の輸送費用の資金を募集している。

地上に降りた北斗七星のそばに「北斗星」の車両が届きますように。夜空の北斗星に願いをかけてみようか。