北総鉄道や相互乗入れ先の京成電鉄押上線、都営地下鉄浅草線、京急電鉄本線・空港線に乗ろうとしたとき、かなり古めかしい電車がやって来るときがある。前面デザインは窓が3つ。貫通扉が付いていて、なんとなく顔のように見える。そのせいだろうか、先日、たまたまこの電車がホームに入ってきたとき、乗車位置に整列していた女子高生が「おじいちゃん電車だ」と言った。
「おじいちゃん電車」と呼ばれたこの電車、車体には「北総鉄道」と記されている。形式名は北総鉄道7260形。車両番号は羽田空港側から7268・7267・7266・7265・7264・7263・7622・7261となっている。もともと4両編成で、2編成をつないで8両固定編成としている。4両目(7265)と5両目(7264)は先頭車で、都心だと中間に先頭車同士がつながって走る姿も珍しい。開業当初からの電車を大事に使っているんだなあ……と思ったら、じつはこの電車、借り物なのだ。北総鉄道の車両としての運行開始は2006年からとのこと。
北総鉄道7260形は京成電鉄からリースされている電車だ。京成電鉄時代の形式名は3300形で、この形式は1968年から1972年にかけて製造された。4両編成と2両編成の組み合わせで、総数は54両だった。北総鉄道にリースとして転属した8両はともに1968年製で、46年も経っている。北総鉄道北総線の開業は1979年だから、それより10年も前から京成線で走っていた。そして2006年に北総線にやって来たというわけだ。
北総鉄道は8両編成の車両を7編成運行している。うち2編成は京成電鉄からのリース車両で、理由はコスト削減のため。新造よりリースの方が安くつくからだ。2編成のうち1本がこの7260形、もう1本は7300形7808編成で、元京成電鉄3700形だ。リースだからいつかは元の会社に返却されるはずだけど、いままで京成電鉄からリースされた車両は老朽化のため、返却後に廃車解体されている。7260形も北総鉄道が最後の活躍となりそうだ。
7260形では、抵抗制御方式という旧式のシステムを使っている。関東で地下鉄に乗り入れる車両としては最も古いという。最近は1日3回、京急電鉄の羽田空港にもやって来る。最新のジェット機を降りて地下駅に行くと、昭和レトロな電車が待っている。ちょっとしたタイムスリップ気分だ。
まだ引退という話は聞かないけれど、「おじいちゃん電車」はとっても珍しい電車だ。京急電鉄の「しあわせの黄色い電車」と同じくらい、「乗れたらラッキー」「見かけたらラッキー」かもしれない。いつまでも元気でがんばってほしい。