6月18日に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)により、つくば市役所にて行われた「生活支援ロボット実用化プロジェクト」の成果発表会。そこで行われた講演の2本目は、日本自動車研究所(JARI) ロボットプロジェクト推進室の藤川達夫室長(画像54)による「国際標準化と生活支援ロボット安全検証センターでの受託試験・研究」だ。

画像54。JARIの藤川室長

講演の内容に入る前に、なぜJARIがどのような組織化をまとめておく。JARIはもともとは財団法人 自動車高速試験場として1961年にスタートし、1969年に自動車に関する総合的な研究を行う公的組織として財団法人 日本自動車研究所へと発展。さらに2003年には、電気自動車などの電動車両の規格・標準の策定および普及、広報などの活動を行ってきた財団法人 日本電動車両協会と、自動車と情報の統合技術の研究開発および普及促進活動を行ってきた財団法人 自動車走行電子技術協会と統合し、現在に至るというわけだ(一般財団法人化は2012年4月)。

しかし、自動車の研究開発を行う組織がなぜサービス(生活支援)ロボットに関わるのかというのは、やはり安全に関する自動車という「走る凶器」の安全に関する研究を50年以上続けているという、そのノウハウが重要視されたからだ。自動車の安全検証を行うためのさまざまな技術や知識などが、サービスロボットの安全検証のためにも大いにプラスになるという点があり、NEDOと産業技術総合研究所(産総研)が生活支援ロボット実用化プロジェクトをスタートさせる際に声をかけられ、JARIとしても新しい分野に挑戦したいということがあって両者の思惑が一致したことから参画に至ったというわけだ。

実際、サービスロボットの中には、移動作業型、パーソナルモビリティ、インテリジェント型の電動車いすなどのように車輪をつけた車両型ロボットも含まれるので、衝突試験など、自動車の安全検証のための技術がほぼそのまま役に立つようなところもあるのである。

また、自動車自身も近年、急速にロボット化が進んでいる点も大いに関係があるのはいうまでもない。自動車のロボット化はITS(Intelligent Transportation Systems:高度道路交通システム)のレポート記事などをお読みいただければわかるが、もはや高速道路に限っていえば自動運転技術はほぼできあがっているレベルに到達している状況だ(画像55)。そこまでいかないにしても、今や好きで乗っている人以外は実質マニュアル車は乗らないわけで、オートマチックミッションというだけでも自動車のインテリジェント化=ロボット化が進展している証拠といえるだろう。

今後も確実に自動車のロボット化が進むことは間違いなく、よって、JARIが生活支援ロボット実用化プロジェクトに主要な組織として参画するのはまったくもっておかしくないことなのである。ちなみに、自動車のロボット化に対する安全は、国際規格ISO26262に沿った検証が行われており、JARIはこの10年ほどその国内への導入に携わってきたそうで、サービスロボットの安全技術と非常に近いものがあるという。なかなかサービスロボットが普及していない点に対して、JARIが参加したことはその解決までの時間を短縮できることは間違いないということで、藤川室長自身は、自分たちが生活支援ロボット実用化プロジェクトに参加できたことはとてもよかったことだとしている。

画像55。トヨタ自動車の高速道路における自動運転の様子。手放しでアクセルも踏んでいない

以上が前置きだが、講演「国際標準化と生活支援ロボット安全検証センター(安全検証センター)での受託試験・研究」は、国際安全規格ISO13482の詳細に関してと、安全検証センター(画像56)での試験の様子などを扱った内容となった。ISO13482は、めずらしく日本が基本構成を提案したことは、すでに比留川部門長の講演の方などでも説明した通り。大概ISOは、欧米(どちらかというと欧州が主なのだが)主導で進み、日本はあとから慌てて追随するということが多い。

今回、欧米主導ではなく日本が主導できたのは、もちろんサービスロボット(実際にはロボット全般だが)に関しての技術力があるからだという。もちろん欧米でもロボットは作られており日本を猛追しているわけだが(特に米国は予算の規模が違う)、日本はちゃんと技術力があった、ということの証明でもあるのである。シーズはあるがニーズはないなどといわれてきたが、シーズがあったことは決してムダではなかったというわけだ。

ちなみにISO13482の提案に関しては、ちょうど生活支援ロボット実用化プロジェクトがスタートした時期と重なっていたそうで、国際的な提案に関しては非常に積極的に行っていったという。そしてプロジェクトの終わる2014年2月の1日に正式発行されたというわけだ。

画像56。安全検証センター