安全検証センターの役割を表したのが画像47だ。最下段にロボットのメーカーがあって、安全検証センターはメーカーから試験を依頼され、その結果を報告する形だが、安全検証センターはそのほかにも、ISO13482で日本がリードするためにそれらの試験データを標準化提案機関(事務局はJARA)に提供し、標準化提案機関はISOに提案するという流れもあった(標準化提案機関は、技術・制度・法規制などの相談をメーカーから受け付けるという役割も持つ)。また、安全検証センターからはJQAからの依頼を受けてデータ提供を行い、メーカーから認証依頼を受けたJQAは品質管理体制および製品の審査認証書の発行を行うという仕組みだ。

そして画像48が、ISO13482の認証スキームの開発を表したものだ。これは前述したように、JARIや産総研など、8者の協力により行われたものになる。サービスロボットは課題として、人との接触度が高くなるため、安全対策を確認する制度が必要であり、認証スキームが開発されてその成果として、サンプリング→特性の確定→レビュー認証に関する決定→認証契約の締結→サーベイランスという流れができたというわけだ。

画像47(左):安全検証センターとの役割(メーカーやJQAなどとの関係図)。画像48(右):ISO13482の認証スキームの開発

また、安全なサービスロボットの開発を行うことの難しさがより明確になってきたことから、そのための開発支援ツールの開発も行われた(画像49)。成果として、「設計コンセプトチェックシート」、「リスクアセスメントシート雛形」、「機能安全設計支援ツール」が開発されたのである。機能安全設計支援ツールは、「故障率データベース」と「部品表」などで構成され、当然ながら高信頼性を確保しているという。

そして2014年2月1日にISO13482が正式発行され、同月17日にはパナソニックの離床アシストベッド「リショーネ」と、ダイフクの「エリア管理システム」(配送センター内高速ビークルシステム)が認証されたという具合だ(画像50)。詳しくはこちらまた2013年2月27日に発行されたドラフト版のISO/DIS13842によって、HALも認証済みである。

画像49(左):安全なサービスロボットを開発するための支援ツールも開発された。画像50(右):ドラフト版ではHALが、正式版ではパナソニックのロボティックベッド(プロトタイプより機能が簡略化された離床アシストベッド)のリショーネと、ダイフクのエリア管理システムがISO13482の認証を2月17日に受けた

ちなみにリショーネ(画像51)は電動ケアベッドの一部が電動リクライニング機能付きの手動車いすとなる。本来のロボティックベッド(画像52)は、その分離する車いすが利用者自らが操縦できる電動車いすだったが、コストが高くついてしまうため、車いすを電動ではなく手動としたのがリショーネというわけだ。利用者がベッド中央から車いすに分離する側に少しだけ体を移しさえすれば、その部分が分離してそのまま電動リクライニング機能付きの車いすになるという機能はロボティックベッドから受け継がれており、移乗の苦労が減るという点では変わらない。なおすでに製品化され、4月からは受注を開始している。

画像51(左):簡易型ロボティックベッドとなる離床アシストベッドのリショーネ。ベッドからその一部が分離して手動の車いすとなる様子(パナソニックのプレスリリースより抜粋)。画像52(右):ロボティックベッド

またエリア管理システムは、どのようなものかというと、前述したように配送センター(倉庫)の大型化が進んでいるため、それに対応した「AGV(Automated Guided Vehicle:自動搬送車)」の制御システムだ(画像53)。これまでは安全性の面からAGVは、産業車両協会が定めるガイドラインの上限である分速60m(時速3.6km)でしか走行できなかったが、今回のシステムによりこれまでの3倍以上の分速200m(時速12km)で移動できるようになったというものだ(動画1)。

画像53。エリア管理システム

その高速度を実現しているのが、3D障害物センサ、エリア管理システム、ローカルエリアセンサの3つの技術。3D障害物センサはいわゆる首振り式のレーザレンジファインダで、AGVの20m前方の正面上下2mの範囲内にある障害物を立体的に検出可能だ。障害物検出試験では、直径70mm×長さ400mmの白色および黒色の円柱状の物体をきちんと検出している(動画2)。また8mの防護エリアを確保しており、安全性機能は「IEC1496-1-3 Type3」に準拠し、機能安全は「IEC61508 SIL2」に準拠。

動画
動画1。分速60m(左)と200m(右)の差
動画2。障害物検出試験や、そのほか安全試験の様子

エリア管理システムは、物陰にいる人やフォークリフトを検出して、AGVが事前に減速、もしくは停止する仕組みだ。それを実現しているのが、作業者や有人のフォークリフトにあらかじめUWB(Ultra Wide Band:超広帯域無線)タグを持たせたり備えてしまったりしようという考え方である。AGVには3D障害物センサもあるわけだが、実はそれだけでは不十分だったという。

そこでUWBタグで作業者の位置を完全に管理し、AGVがセンサで感知する前の段階ですでに把握しているというわけだ。それにより、作業者やフォークリフトなどとすれ違う時に減速するのは当然で、目の前を急に横切られたとしても事前に把握しているからきちんと停止して安全な距離が開いてから再び走り出せるのである(動画3)。

動画
動画3。AGVが安全に減速したり停止したりする様子

ただし、UWB無線が届きにくいブラインドとなってしまうエリアもあり、そこをカバーするのが3つ目のローカルエリアセンサだ。天井に設置されたレーザレンジファインダの3D障害物センサで、UWB無線のブラインドとなってしまうエリアの作業者やフォークリフトを検出する仕組みである。

このようにUWBタグとローカルエリアセンサを用いた作業者やフォークリフトの完全な位置管理と、さらにその上に保険をかける形のAGVに搭載された3D障害物センサが装備されることで、決して作業者やフォークリフトに衝突するようなことのない安全性を実現しているのが配送センター内高速ビークルシステムというわけだ。また今回の高速AGVの安全技術開発で得られた結果を基にして産業車両協会との協議が持たれ、JISに対してAGVの安全規格に関してのAGV高速化に対する追加防護策も提言されている。