Micronはメモリ階層は拡張が必至と主張

MicronのMemory System開発担当のVPであるDean Klein氏はメモリテクノロジを概観し、今後、ストレージクラスのメモリが台頭し、メモリ階層の拡張は必至であると述べた。

図6.17 発表を行うMicronのDean Klein VP (以下の図は、ISC 2015におけるKlein氏の発表スライドが出典)

DRAMの微細化は続いているが、図6.18に示すように、世代が進むごとに、必要なマスクの枚数やクリティカルな露光以外のプロセスステップ数が増加している。また、ウェハあたりのクリーンルームの面積も増加するなど、ウェハあたりの製造コストが急増している。

図6.18 DRAMの製造プロセスは急激に複雑化している

NAND Flashでは平面型のNANDの微細化は行き詰まりで、Micronとしては16nmの先はすべて3D NANDに集中する考えであるという。

図6.19 NAND Flashは、今後は3D化の方向

20nm以下になると2重露光などが必要になり製造コストが上がってしまう。このため、微細化は露光解像度などの技術的な制約よりも、経済的なものが制約になってくる。

図6.20 今後の微細化は技術ではなく、経済性で決まる

一方、ユーザ側からは、DRAMとNAND Flashの性能ギャップは大きいのでこの間を埋めるメモリが要望されており、図6.21に示すような形にメモリ階層が進化しつつある。

図6.21 発展途上のPCMなどがDRAMとNANDの間を埋める

この間を埋めるメモリとしては、図6.22に示すように、多くの種類のものが提案されている。

図6.22 CBRAM、FERAM、PCM、MRAM、RRAMなど多くのメモリが提案されている

このようなメモリが使用可能になると、メモリ階層は図6.23のようになると考えられる。L3キャッシュの下にはDRAMチップを3D積層する高バンド幅メモリ、その下に高密度のDIMMの層が来る。

そして、その次に現在は開発途上のメモリを使うSCM(Storage Class Memory)の層が入る。SCM1は速いメモリで、Load/Storeでアクセスするもの、あるいはファイルのようにRead/Writeでアクセスするものが考えられる。SCM2は速度よりビットコストを重視するもので、この層は新メモリではなくNANDのSSDという可能性もある。そして巨大容量のバルクストレージ層が付くという階層構造になると予想する。

図6.23 L3キャッシュの下に5層のメモリ階層

SCMの特性としては、図6.24のようになると予想され、不揮発性、あるいは準不揮発性を持ち、NANDよりビット単価は高いが、寿命は長い。またDRAMと比較すると、ビット単価は安いが、アクセスは遅い。

チップアーキテクチャとしてはバイトまたはワード単位のランダムアクセスができ、信頼性の観点からエラー訂正が必要となる。

図6.24 SCMの特性。不揮発性、あるいは準不揮発性。NANDよりビット単価は高いが、寿命は長い。DRAMよりビット単価は安いが、アクセスは遅い

発展途上のメモリは、遠からず実用化に進むが、方式によって特性が異なる点がある。経済的には、これらのメモリは最初から大ブレークはしないと考えられる。大量のデータをインメモリで処理するというケースが増えており、これらのメモリをシステムに取り入れる意義は大きいが、これはHPCにとって最大の挑戦であると同時に最大のチャンスでもあるとKlein氏は結んだ。

図6.25 発展途上のメモリは発展して実用化される。これらのメモリをシステムに取り入れることはHPCにとって最大の挑戦と最大のチャンスである