1:概要

今回はMicrochipのアナログ系の新製品である「MCP3901」を試してみました。このデバイスは、16/24ビット分解能の高速ΔΣA/Dコンバータ(ADC)で、もともとはスマートメータの電力測定用として開発されたADCです。電力用ということで、2チャネルのADCを内蔵していて、最高64kspsという高速動作が可能なA/Dコンバータです。

このデバイスを使って微小電流を測定し、QVGAのカラーグラフィック液晶表示器にリアルタイムで表示するオシロスコープを製作してみました。これは、前回の連載で製作した低消費電力時計で、実際の消費電流を計測しようとしたのですが、マルチメータやオシロスコープなどの既存の測定器では、ダイナミックに変化するμAオーダの微小電流を正確に計測できないため、では作ってしまえということで製作したものです。

一応期待通りμA単位での計測を、リアルタイムで計ることができました。完成した微小電流オシロスコープの外観は写真1のような基板ユニットの構成となっています。2.8型のQVGAカラーグラフィック液晶表示器を使ったので十分の解像度で表示ができました。

写真1:微小電流オシロの外観

2:微小電流オシロスコープの仕様と構成

製作する微小電流オシロの仕様は、前述のような目的ですので、μAオーダの電流をできるだけ高速に計測できるものにするため、仕様を表1のようにすることにしました。

表1:製作する微小電流オシロの仕様

この仕様をもとに検討した結果の全体構成を図1のようにしました。

図1:微小電流オシロスコープの全体構成

1μAという電流計測は、シャント抵抗を10Ωにしても10μVの電圧ですから、これをPICマイコンのADCで計測することは不可能です。

そこで、Microchipからリリースされている高速で高分解能のΔΣADCを使うことにしました。このADCはSPIインタフェースとなっています。

表示にはオシロスコープとしてグラフ表示とし、かつグラフから電流値も読み取れる程度の表示としたいので、320×240ドットで2.8型とやや大きめのカラーグラフィック液晶表示器を使うことにしました。この液晶表示器とは8ビットパラレルのインタフェースとなります。この制御のため、RAMメモリ容量が大きく高速なPICマイコンを選択し、dsPIC33FJ64GP802を使うことにしました。これで40MIPSの速度で16KBのRAMを確保することができます。

電源は、dsPICと液晶表示器は3.3Vでよいのですが、MCP3901のADCが5Vを必要としますので、外部からDC5VのACアダプタで供給することとし、ADCにはフィルタを挿入して直接5Vを供給し、他は3端子レギュレータで3.3Vとして供給することとしました。

タッチスクリーンは、PIC内蔵の10ビットADCを使って制御しますのでアナログ入力ピンに接続しています。