日本最多の店舗数を誇るスーパー銭湯「極楽湯」を運営する株式会社極楽湯。横浜芹が谷店の入り口では青果が販売され、食事スペースのほかカットサロンやリラクゼーション施設、ゲームコーナー、うたた寝スペースなどがあり癒しの空間が広がる。こうした店舗の運営を担う店長や本社の役職者がiPhoneでサイボウズを利用することにより、決裁時間の短縮などでスピーディな業務が可能になった。

極楽湯 横浜芹が谷店の外観

各店舗の店長と役職者にiPhoneを配付

店長の業務は幅広い。店舗で働く100名近くのスタッフ指導や人材採用、売上管理、設備点検も行うほか、店舗外に出る機会も多いという。近隣企業への宴会プランの案内や、店舗で実施するイベントを共催する取引先との交渉など営業活動も店長自らが足を運ぶのだ。

株式会社極楽湯 管理部 副部長の鈴木正守氏

「外出先での連絡手段として、まず携帯電話(フィーチャーフォン)を店長や本社の役職者に配付しました。それでもメールや決裁を確認するためノートパソコンを持って出たり、急いで事務所に戻ってパソコンを立ち上げることがあると聞いていました」とiPhone導入前を振り返るのは、同社管理部 副部長の鈴木正守氏。

グループウェアはサイボウズを利用していたが、フィーチャーフォンからでは使える機能が制限されていた。

「社外でも業務をスムーズに行うため、スマートフォン導入を検討しました。Androidとも比較しましたが、iPhoneに対する不満がなかったのと、より直感的な操作ができるという社員の声を取り入れ、iPhoneに決めました」(鈴木氏)

スマートフォンが普及し始めたばかりの2008年、導入当初は電話のかけ方やWebブラウザ(Safari)の閲覧方法を記載したマニュアルを作り、店長会議でレクチャーしたという。電話帳コピーのアプリを使って必要な電話番号をフィーチャーフォンから移行するサポートも行った。サイボウズ利用時はスマートフォン用アプリ「Kunai」を使わず、ログインIDとパスワード入力が必須となるSafariからのアクセスを原則とし、iPhoneでのグループウェア利用が始まった。

iPhoneでの決裁で承認までのスピードが大幅短縮

販売促進の広告やイベント企画、設備の修繕などで決裁が必要となるシーンは多い。

「以前は紙の申請書でしたが、押印が必要だったので承認者が外出や出張中だった場合など、最長で1~2週間くらいかかりました」と横浜芹が谷店店長の浅川健二氏は以前の状況を説明する。

サイボウズのワークフロー機能の利用で決裁が電子化され、さらに決裁の承認者となる店長や本社の役職者へのiPhone配付で社外からもサイボウズにアクセスできるようになり、状況は劇的に改善した。

横浜芹が谷店店長の浅川健二氏

「iPhoneで決裁の承認ができるようになってからは、早ければ5分ほどで決裁が完了します。販促物の発注や工事の依頼など、次のアクションをすぐ起こせるのが普通になりました」(浅川氏)

承認者が社外にいても決裁を進められるため、大幅に承認までのスピードが短縮した。上海にも店舗のある同社では、社長が海外出張中でもスムーズな決裁が実現している。また緊急性の高い案件について、電話での口頭の承認だけで実施することもあったが、今では決裁が事後になることもほとんどなくなった。

「iPhoneを持つようになってからは急を要する対応のために休日に出勤することもなくなり、助かっています」と浅川氏は利便性を実感している。

実際の導入効果は、以下の動画で詳しく説明している。


メールを見ながらの通話や店舗内の巡回でもiPhoneが重宝

折り込みチラシなどのデザインチェックもiPhoneで行えるという。サイボウズでメールを確認し、添付されたチラシのPDFファイルを外出中でも閲覧できるのだ。

「期限が明日まで、など至急の依頼は外出中にiPhoneで対応します。チラシのPDFファイルを開いて、画面に表示した状態で電話をかけます。通話をスピーカーに切り替えて先ほどの画面を表示させれば、チラシを見ながら修正指示を出せます。対応スピードは格段に上がりました」(浅川氏)

外出中だけでなく、店舗内でもiPhoneを利用する機会がある。店長はリスクを未然に察知してトラブルを防げるよう定期的に店内を巡回する。

「たとえば設備室で異常を発見したら、iPhoneのカメラで撮影します。デジカメと遜色ない画質なので、撮った画像をメールに添付して現状報告や工事依頼の際に活用します」と浅川氏はiPhoneの活用シーンを話す。

iPhoneでチラシのデザインチェックも行う(左)、設備室を巡回する浅川氏(右)

エリアミーティングの効率化にiPadの導入を検討

「お互いの顔を見ながら遠隔地をつないでiPadでビデオ会議ができる、『ビデオカンファレンス』の導入を検討し始めています」と今後の展望を鈴木氏は語る。全国にある店舗のうち、エリアごとに店長が集まるエリアミーティングが月に一度実施されている。店舗を離れて参加することになるが、店舗内でのお客様へのサービスにかける時間を多く確保するためにも、店長の不在は少なくしたい。店舗にいながら他店との情報共有ができるビデオカンファレンスが役立ちそうだ。

くつろぎの空間を支える社員間では、スピード感のある業務遂行がiPhoneによって実現している。iPadが導入されればより大きな画面での業務が可能になり、活用の幅がさらに広がりそうだ。