足立区の住宅街にふと現れる、モダンな絵の描かれた壁面が印象的なカフェバーフェローズ。下北沢のバーに着想を得たという店内は白を基調とし、カラフルな椅子が配置されている。棚にはアーティストのアクセサリーなどの雑貨が置かれ、販売も行っている。4年前に開店したという同店舗は、ワインのテイスティング会を主催するなど利用客同士のコミュニケーションも大切にしており、そのコンセプトは"仲間"を意味する店名に由来する。

酒瓶の並んだカウンターの奥から、売り上げ管理はもちろん、調理、接客も行う店長 吉岡恵一氏が現れる。早くから「PayPal Here」に関心を持ち、日本で提供が開始されるとすぐにソフトバンクショップへ駆けつけたという。収支・売上管理にもiPhone、iPad向けアプリを駆使する同氏の取り組みは興味深い。

カフェバーフェローズの外観(左)と、内装(右)

コスト面の課題からクレジット未対応で営業開始

PayPal Here導入前、同店舗はクレジットカード払いを取り扱っていなかった。

カフェバーフェローズ店長の吉岡恵一氏

「クレジットカード端末がIP電話非対応だったり、初期費用のほかに通信回線料、手数料がかかるといったコスト面の懸念もあり、導入を見合わせました」と、吉岡氏は当時を振り返る。

時には「カードは使えますか?」と聞かれて現金払いをお願いしたり、「現金がなかった…」という場合に「後日でいいですよ」と対応するケースもあったという。

カフェではクレジットカード払いは少数派かもしれないが、営業時間が18~24時の同店舗ではお酒やフードメニューの注文もあり、「カード払いできると手持ちの金額を気にする必要がないので、安心感にもつながるようです」(吉岡氏)

支出や売上管理、レジシステムにアプリを駆使

「開業当初は自分でMicrosoft Accessで作ったソフトウェアで会計していましたが、今は売り上げ管理もできるユビレジを使っています」と話す吉岡氏は、iPhone、iPadのどちらも利用中でアプリの最新情報にも精通している。

ユビレジの月額使用料5,000円のプレミアムアカウントを利用中の同氏。無期限でクラウド上に売り上げデータが残るのが魅力で、メニュー登録もできる。iPadの大きな画面で直感的な操作が可能だ。そのほか、レシートを撮影すると文字を読み取り、品目と値段の一覧を生成できるiPhone向けアプリ「ReceReco(レシレコ)」や、売上・支出管理でき、青色申告書も作成できる会計ソフト「Freee(フリー)」などを披露してくれた。

ユビレジのメニュー画面。左側のメニューをタップすると、その項目が右側の注文一覧に移動する

PayPal Hereでスマートな会計を実現

「お客様にクレジットカード払いができるか聞かれた際、PayPal Hereを持っていくと『これで支払いできるの?』と驚かれます」と、吉岡氏は利用客の反応を話す。クレジットカード利用客は、少額でもカード払いを選択するという。電子マネーなども普及する昨今、あまり現金を持ち歩かない人にとっては、クレジットカード決済対応の店舗は助かるだろう。

運用面でもメリットがあった。

「会計時はレシートを出してお客様のところへ持っていき、おつりが必要な場合は再度レジとテーブルを往復します。PayPal Hereでの支払いであればこの動作は必要なく、お客様と会話しながらスムーズに支払いが完了します」(吉岡氏)

また、クレジットカード登録を行ったペイパルのアカウントを持っている利用客であれば、吉岡氏のメールアドレス宛に支払いをすることも可能だ。利用客は自分のペイパルアカウントにログインし、メールアドレスや金額などを入力するだけで支払いができる。

「メールアドレス宛の支払い方法のほか、チェックイン支払いも近々利用してみたいと思っています」と吉岡氏は意欲を見せる。ペイパルのアプリではiPhoneのGPS機能を使って近くのPayPal Here導入店舗を検索し、チェックインできる。店舗側にはチェックインしたユーザーの情報が通知され、支払い金額を指定する。ユーザーはアプリ上で支払いを完了でき、レシートはメールで受信可能だ。こういった方法なら現金やクレジットカードがなくても、iPhoneとペイパルアプリがあれば支払いができてしまうのだ。

iPhoneに接続してクレジットカード決済ができるPayPal Here

支出、売上管理から決済まですべてできるソリューションになることを期待

「現状は別々のアプリなどで支出管理、売上管理を行っているので、結局PCで取りまとめる作業が発生しています。この手間をなくしたいですね」と、吉岡氏はさらなる効率化を望む。

「日本で早くからモバイル決済に対応したペイパルには期待しています。ぜひ売上管理などができるアプリとの連携に対応してほしいです」(吉岡氏)

2013年7月下旬にはiPadに最適化され、商品のカテゴリ別管理などに対応したPayPal HereのiPad版アプリ「PayPal Here for iPad」がリリースされている。こうしたiPhone、iPad対応のさまざまなソリューションが充実することで吉岡氏の作業効率も向上し、店舗運営に貢献するだろう。