車載イメージング市場は2桁成長で車載カメラ1億台時代へ

今回のディスプレイ産業フォーラムから、新たに車載イメージング市場に関する独立した市場予測が加わり、IHSテクノロジー・セミコンダクタ―部門シニアプリンシプルアナリストの李根秀(Kun Soo Lee)氏が講演を行い、最後に車載半導体デバイスについての言及も行った。

車載イメージング市場の予測の前提となる世界の自動車販売台数について、IHSは次のように見ている。2016年の世界の自動車販売台数は、前年比2.7%増の9000万台を突破する。2016年から2021年までの年平均成長率は3%と予測しており、2019年には1億台を超えて2021年には1億500万台に達するとしている。

また2016年の車載カメラ市場は、初めて5000万台を超えることが予想されている。同市場は2016~2021年の間、年平均14.9%で成長し、2021年には1億個市場へと成長するとする。現在、車載カメラは視界補助(リアビュー)カメラと高級車向けの画像認識カメラが普及し始めており、投入率(車載カメラ台数/自動車台数)は2017年に70%を突破し、2021年には100%を超えると予測されている。

中でも視界補助カメラの投入率は、2018年までに80%を超える。一方で画像認識カメラの投入率が20%を超えるのは2020年代に入ってからであろうという。

視界補助(リアビュー)カメラ市場は、2016年には、前年比20.8%増の4200万台の見通しである。今後、年平均率13.3%で成長し、2018年には5000万個、2021年には7900万個の市場へと成長する。解像度としてはVGAクラスが主流になると見られる。

一方の画像認識(ADAS)カメラ市場は、2016年に前年比34.7%増の820万台となる見通しであるが、今後、年平均21.7%と言う高い伸びで成長し、2017年には1000万台を突破、2021年には2000万台を超えるという予測だという。

現在、監視カメラ(2015年の用途別シェア6割)や軍事防衛用(同3割)に主に使われている赤外線カメラは、自動車用としては、例えばMercedesやAudiなどの高級車に一部採用されているものの、車載市場として本格的にブレイクするのは2020年以降で、2025年ごろに1000万ドル規模に到達する予想となっている。

2桁の成長市場となる車載イメージャは2社が寡占

車載カメラ用イメージセンサ(イメージャ)市場は、2016年に前年比22.5%増の5億4700万ドルとなる見通しである。今後、年平均12.3%という高い伸びで成長し、2021年には10億ドル目前となることが予測されている。視界補助カメラでは、現在主流であるVGAクラスの金額ベースでの伸びが2017年以降止まる一方でHDクラスのイメージセンサが急伸し、2021年にはVGAを抜き去るとの予測である。CCDについては、徐々に比率が下げっており需要がなくなりつつある。

車載カメラ用イメージセンサのマーケットシェアは、1位の米国ON Semiconductorが56%と過半を占めており、2位の米国Omnivision(中国資本に売却済み)のシェア(23%)と合わせると8割を超えている。3位は東芝(5%)、4位はベルギーMelexis(3%)、そして5位がSTMicroelectronics(2%)となっているが、コンシューマ向けイメージセンサで業界トップのソニーも車載に力を入れ始めており、今後の動きが注目される。

車載半導体市場は年平均6%成長で2020年に400億ドル規模に成長

自動車向け半導体市場は、2020年まで年平均5.8%の成長を予測している。2015年の市場規模は300億ドルだったが、2020年には100億ドル上乗せの400億ドルを超えることとなる。

車載半導体の中で売上高が特に大きなカテゴリはアナログとマイクロである。アナログの代表的なデバイスはIGBTとドライバICなどのパワー半導体、マイクロの代表はECUのメインICであるMPUやナビ用チップセットである。成長率からみても、マイクロ分野の成長率が車載半導体の中で一番高く、2020年までの年平均成長率は8.4%と予想される。

車載半導体メーカーシェアはNXPがダントツのトップに

2015年車載半導体売上高で、NXP Semiconductorsが2位以下を大きく離してトップに躍り出た。飛躍の理由は、米Freescale Semiconductorを買収したことにより、この分の売上高が上乗せされたからである。2位には、独Infineon Technologiesが入った。International Rectifier(IR)の買収もあったが、元々、自動車用IGBTやドライバICなどで実績があり、長年にわたり自動車メーカーと信頼を築き、得意のパワー半導体で着実に業績を伸ばしてきた。2位と僅差で3位になってしまったルネサス エレクトロニクスは、日系半導体メーカーに深く浸透してMPUを生産してきた。同社は2010年にNECエレクトロニクスを吸収合併したことで、車載半導体売上世界一の座に就くも、リストラに次ぐリストラで売上高が年々減少し、トップを奪われただけでななく、5年で2つ順位を落とす結果となった。以下、STMicro 米Texas Instruments(TI)と続く。トップ3社の、自社半導体売上高に占める車載半導体の割合は4~5割まで高まってきている。

車載半導体の国・地域別シェア(2015年)では欧州メーカーのシェアが42%に上昇した。これは前述した通り、NXPのFreescale買収によるためである。次にシェアが多いのが、米国で30%、3位が日本で24%、日本以外のアジア太平洋地域が4%だった。

最後に、少々古いデータであるが、デバイスカテゴリ別の売上高ランキングトップ5を表1に示す。2014年の時点で、マイクロおよびロジックではルネサスがトップ、メモリでは東芝が5位に入り、ディスクリートでは5社中3社が日本企業で、この分野での日本勢の善戦の善戦が目立つ

なお、今回の連載で要約して紹介した講演内容の詳細(統計データ)は、「ディスプレイ世界市場データブック2016年後期版」(IHSテクノロジー、2016年7月末発行)に掲載されている。次回のディスプレイ産業フォーラムは2017年1月末に東京で開催される予定である

車載半導体カテゴリ別売上高トップ5企業 (2014年)