外科医でありながら、「オペ室より愛をこめて」などを執筆して漫画家としても活躍するさーたりさんによる連載「メディクショナリー」。言葉の意味は「medical」+「dictionary」ということで、さーたりさんが時にコミカルに、時に鋭く医療用語・略語を解説します。今回紹介するのは、「Adm」と「Ent」です。

Adm(入院)とEnt(退院)


入院は何らかの病気やケガなどによって、医療機関に一定期間滞在すること。退院は入院している医療機関から去ること。


使用例: 「本日Admの患者さん、来週Ent予定です」

ドクターさーたりの解説

「入院」はAdm=admission(英語)、「退院」はEnt=Entlassen(ドイツ語)と略します。「入院・退院」でセットの言葉なのに英語とドイツ語が混在しているなんておかしいですが、この組み合わせが多く使われているようです。

ちなみに「ENT」は「ear,nose,and throat」(英語)で耳鼻咽喉科を指します。つまり、「ENTをEnt」とアナムネやカルテなどに表記する場合もあるということです。

高齢の医者には入院のことを「アウフ」=Aufnehmen(ドイツ語)と略す方もいるのでさらに分かりにくいですが、ドイツ語で統一という意味ではこちらが正しいです。

さらに言うとこの略語は、カルテ記載には使うけれども口頭ではあまり使っていません。私の周りではEntは使っていますが入院は「入院」と言っています。記載と口頭の言葉が違うことも混乱を招きますが、慣れてくるとそれが当たり前になってきてしまいます。

患者さんも慣れない言葉を見て大変でしょうが、医療従事者も新しい職場になると、そこで使われている略語を覚えるのに実は苦労しています。

筆者プロフィール: さーたり

某大学病院勤務の消化器外科医。2児の母の生活、外科医の日常、漫画・アニメへの溢れる愛を描き散らしたブログ「腐女医が行く!!~外科医でママで、こっそりオタク~」を絶賛随時更新中。また、Twitterもしており、アカウントは「@gogofujoy」。