世界の事例
まず、世界の事例であるが、Clarifaiは、画像やビデオをディープラーニングで認識してそこに写っているものを認識してキーワードを与えるというサービスを提供している。次の図の右下にあるグラフの下に2つのリストがあるが、左側のリストがキーワードの一覧である。この左側のリストから、いくつかのキーワードを選択して右側のリストに入れる。上の折れ線グラフは、右側のリストのキーワードがシーンにどの程度含まれているかを時系列で示すもので、例えばtrainが多く含まれている時点を選択することによって、電車の写っている部分を効率的に取り出すことができる。
単純に対象物を認識するのではなく、写っている人の表情を分析して、感情を読み取るサービスを提供するのがAffectivaやEmotientである。Affectivaは表情に含まれるsmile、surpriseやattention、expressivenessなどのスコアを出力する。
Emotientは右端のグラフのように時系列でどのような感情が読み取れるのかを表示する。
Camioは留守宅の様子をリモートで監視するサービスを提供する。Webカメラで留守宅の様子やペットが何をしているのかと言った映像を提供するサービスはあるが、同社は、ディープラーニングによる画像認識で、右下のように各種の画像の中から、注目する画像とそうでない画像を指定し、注目する画像だけを抜き出す。注目する画像が出てきた場合だけ、連絡を入れることにより、監視の負担を減らすことができる。
AlchemyAPIやLexalyticsは自然言語で書かれた文章を認識して、主題を抜き出したり、要約を作ったりするサービスを提供している。Twitterなどに書き込まれた企業や新製品の評判は重要であるが、膨大な量の書き込みを人間が読んで、評判を測定するのは手間が大変である。これをAlchemyAPIやLexalyticsのディープラーニングで置き換えれば、サーベイのコストを下げる事ができる。
なお、AlchemyAPIはIBMに買収され、Watsonなどと組み合わせたサービスとして提供されている。
Enliticは医療用のX線やCTスキャンの画像の読影を行って所見のレポートを作成して、医師を補助する会社である。従来のエキスパートシステムは適用範囲が狭く、診断の質も良くないことが多かったが、ディープラーニングを使うことにより、広い範囲の病気に対応できるようになったという。
Butterfly Networksはその技術の詳細を公表していないが、安価な携帯電話サイズの超音波スキャナを開発しており、この超音波画像をクラウドに送り、読影を行うディープラーニングシステムを開発していると言われている。
vRadは350人以上の医師を抱えて、病院などに読影サービスを提供する会社である。省力化、診断時間の短縮、精度の向上などを目指して、読影を行うディープラーニングシステムを開発している。そして、3000万人の患者のCTスキャン画像を学習したシステムで、まだ、頭蓋内出血に至っていないが、出血が起こりそうな兆候を見つけるのに成功したという。
Deepgenomicsはディープラーニングを使って、細胞が遺伝子を読み取って生体分子をつくるモデルを生成し、それぞれの遺伝子変異がどのような影響を与えるかを推測するシステムを作った。これを使うことにより、未知の遺伝子変異が引き起こす病気についても原因を推測できるようになったという。
QuatifiedSkinは、ディープラーニングを使って、肌への物質の到達速度をもとめるシステムを作った。実験を行うことなく、新しい物質がどの程度肌に到達するかを推定できるので、新製品の開発期間を短縮できるという。
StockNeural.netは時系列データを扱うRNN(Recurrent Neural Network)で株価の予測システムを作っている。
Gastrographはビールの製造工程をモニタし、ビールの味を左右する微量の成分の量から、ディープラーニングを使って、ビールの味の良し悪しを判定する。ターンアラウンドタイムが短く、すぐに製造プロセスにフィードバックができるのが大きな利点であるという。