"報告忘れ"が業務管理のネックに

前回は「Google Maps Coordinate」の概要について解説したが、今回からは実際の現場に沿った活用方法を紹介する。ここでは「マイナビ事務機」という架空の会社を例に、シチュエーションごとの使い方を見ていこう。

このマイナビ事務機は、オフィス事務機器の販売・保守を手がける企業という設定だ。東京と大阪に拠点を持ち、それぞれ10名程度の営業担当者を抱えているとしよう。

同社では、営業活動の効率化に向けた取り組みとして営業担当者にiPhoneを支給。社内ポータルに営業担当者用の進捗報告表を設け、業務管理を行っていた。具体的には、営業担当者が前日までに営業先を記載しておき、訪問後に外出先からスマートフォンで簡単な報告を記入。営業活動後、会社に戻ってから報告書を作成するといった具合だ。保守業務に関しても同様の仕組みを採用していたが、こちらはスマートフォン利用率の高さから試験的にBYODを採用している。

また、同社には電話やメール、Webサイトのフォーム経由での問い合わせも多い。時間的に余裕があれば明日以降の予定に追加するが、急ぎの案件に対しては進捗報告表を確認。現場近くにいる営業や保守業務担当者に連絡し、そのまま先方に向かってもらうようなケースも多かった。

しかし、営業・保守業務担当者は時間に追われていることに加え、毎回文字入力が必要になる不便さからか、顧客訪問後の報告が抜けてしまうこともしばしば。社内からでは、現状確認やリアルタイムなコミュニケーションが行いにくく、当初の予想と比べてそこまで顧客訪問回数が増えることもなかった。

そこで、「営業・保守業務担当者に負担をかけることなく、できるだけリアルタイムかつ正確に業務の進捗管理が行えないか」と考えた結果、Google Maps Coordinateの導入に至ったのである。しかもGoogle Maps Coordinateなら、iPhoneとAndroid搭載スマートフォンが混在しているようなBYOD環境でも問題なく使用することができる。

Google Maps Coordinate

顧客からの緊急案件にもスピーディーに対応

まずGoogle Maps Coordinateで便利なのが、スマートフォンのGPS機能を使って各担当者の現在位置をリアルタイムかつ正確に取得できる点だ。従来の方法では、営業・保守業務担当者からの情報入力を待つしかなく、報告忘れなどがあると社内からの管理が上手く行えなかった。かといって、顧客への説明などで滞在時間が長引いている可能性もあるため、一概に報告忘れと判断することもできない。これでは予定変更など緊急の連絡をとるにも非常に不便だったのだ。

しかし、Google Maps Coordinateを導入してからはこの状況が大きく改善された。まず、GPS機能でリアルタイムな位置情報を取得して地図上に表示できるため、社内で業務管理を行うコーディネーターは「顧客への説明が長引いている」のか、それとも「報告を忘れているのか」が一目瞭然。移動していれば、業務を終えて次の訪問先へと向かっていることが分かる。

営業・保守業務担当者の状況が分かれば、社内から行う業務管理の効率も大幅にアップする。特に、スピードが要求される保守業務に関しては、顧客から「FAXの調子が悪いから大至急きてほしい」という連絡が入ることも多い。しかし当然ながら、当日は保守業務の予定が立て込んでおり、担当者がすべて出払っているようなケースも出てくるわけだ。

これが従来のシステムなら、当日のスケジュールを見ながら現場に近い担当者へ打診し、連絡がつくまで待つ必要があった。もし担当者との連絡がつかなければ、顧客にお願いして翌日以降のスケジュールに組み込むこともやむを得ないだろう。

一方でGoogle Maps Coordinateを導入した後は、顧客からの依頼を受けたコーディネーターが現在の状況を素早くチェック。スケジュール/ステータス/位置を見ながら、現地に急行できそうな担当者に連絡をとることができる。場合によっては、一番近い担当者を現地へ向かわせ、次に訪問予定だった顧客を別の担当者へ割り当てるようなことも簡単に行える。

担当者の現在地をコーディネーターはリアルタイムに把握できる

顧客にとって、いざという時に素早く駆けつけてくれる安心感は、契約を継続する上でなにより重要なポイントとなる。「ここは頼れる」というイメージを持ってもらえれば、契約更新の可能性も上がるだろう。

また、こうした臨機応変な対応は保守業務だけでなく、営業面でも大きな武器となる。電話やメールなどで問い合わせがあった際、先方さえ時間の都合が付けば営業担当者が直接説明に訪問することで、企業としてフットワークの軽さが印象づけられるわけだ。

このようにGoogle Maps Coordinateは、自社内での業務管理が効率的に行えるだけでなく、CS(顧客満足度)向上にも大きく貢献してくれる。次回は、より具体的な使い勝手について解説していこう。