工夫が凝らされたCAの制服

CAが着ている制服は航空会社によってずいぶん違う。最近話題のLCC(格安航空会社)は洒落っ気のないポロシャツあたりが主流だが、国を代表するようなフラッグキャリアはずいぶん個性的だ。特にアジア系の航空会社は民族衣装をアレンジした制服が多く華やか。ベトナム航空はアオザイ風、エアインディアはサリ―風と、機内にいる時から海外旅行の気分を盛り上げてくれる。

大韓航空の歴代の制服。航空会社の制服は一定の期間で刷新されている。デザインが時代を反映していておもしろい(2009年3月撮影)

写真左はLCCのピーチ・アビエーションの制服。腕を上げてもジャケットの形が崩れない。上はトルコ航空機内にて。いわゆる普通の制服にも様々な工夫が施されている

そして、中でもダントツの人気を誇るのがシンガポール航空のサロンケバヤと呼ばれる民族衣装をあしらった制服だ。スカートに入ったスリットが男性の目を引くだけでなく(笑)、そのデザインは女性にも好評で、シンガポールの街中ではこの制服のフェイクも売られている。そのサロンケバヤとコーディネイトされたサンダルを「お土産にください」とねだられることも少なくないそうだ。

「容姿も採用条件のひとつ」というシンガポール航空のCA

しかし、ここで疑問。機内でサンダルを履いていて、非常時は大丈夫なのだろうか。

いざ緊急事態となって走らなくてはいけない時、あるいは急いで脱出しなくてはならない時、サンダルでは動きにくいのではないだろうか。

しかしそんな心配は無用だ。実はシンガポール航空のCAが履いているサンダルは特注品。靴に劣らない運動機能が備わっている。

考えてみれば当たり前の話で、緊急時に「サンダルのせいで避難に遅れ」などということになれば、一大事である。「お土産にください」と言われても簡単に渡せないのも納得なのである。

サロンケバヤのような「ロングドレス」ではなく、普通の制服にも、乗務に役立つ様々な工夫が施されている。スカートの腰の部分(背中側)を前の部分(腹側)より長くして、前かがみになっても不恰好にならないようにする、手を上に伸ばして客席上部に荷物を上げる際にスカートからはみ出ないようにシャツのマチを長くする。男性クル―の場合も、パンツが綿100%だとすすけるので、意図的にポリエステル生地を混ぜる。そんないろんな工夫が随所に施されているので、気になる人は、今度乗ったときに制服をよく観察してみるといいかもしれない。ただし、あまりジッと見つめていると変な乗客だと思われるのでご注意を!